日経新聞とビジネスホテルチェーンのルートインが興味深い対立を見せている。きっかけとなったのは6月24日付の日経夕刊が報じた「「ルートイン、私的整理へ」って記事。事業再生ADR(裁判外紛争解決)による経営再建をめざす方針を固めたって報じた。
情報源は明らかにされておらず、「返済期限の延長などを通じて経営の立て直すもようだ」、「グループ全体の借入金は3月時点で900億円とみられている」などと推定表現が目立つ。それなりに歯切れの悪い記事といえるだろう。
これに対しルートインは、公式サイト上に「
6月24日の事実無根の誤った報道について」(PDFファイル)と全面否定にみえる抗議文を掲載した。要するに、収益が急速に悪化した事実はないという反論で、真っ向から噛みついたのかと思いきや、読み進んでいくと「強固な収益体質と長期にわたる安定した財務体質の確立を図るため、そのひとつの手段として
ADR 手続きの活用についても視野に入れております。これは、取引金融機関の支援を得て返済条件の緩和をお願いするものです。」なんて文章が出てくる。あちゃ〜。この部分で腰砕けだ。
これじゃ、日経に訂正を求める抗議文を送っても鼻もひっかけてもらえないし、「法的手段を講じる次第です」なんて強がるのはやめておいた方がいいですよって言いたくもなる。
だって、今年に入ってからルートインの事業計画に大きな変化があったのは事実なんだから。どうもおかしいと思っていた。公式サイトを見る限り年末年始あたりの開業予定店舗一覧のページはすごくにぎやかだった。7カ月ほど前に私が把握していた開業予定は以下の通り(一部漏れや名称や日付の表記ミス等があるかも)。
予定 名称 実際の開業日or新たな開業予定日
2月28日 名張 2月28日
3月 3日 鶴岡駅前 3月3日
3月 6日 いわき泉駅前 3月6日
3月10日 東室蘭 3月10日
3月13日 花巻 3月13日
4月10日 渋川 7月2日
4月11日 伊那インター 7月2日
4月13日 由利本荘 7月17日
4月22日 名取
4月23日 足利駅前 7月9日
4月24日 半田亀崎 7月24日
4月28日 氷見
5月30日 石巻 7月14日
6月11日 駒ヶ根インター7月7日
7月31日 新潟黒崎
8月 3日 矢板
8月10日 第2西那須野 7月30日
8月21日 丸亀
9月10日 ひたちなか
9月10日 魚津
9月10日 鹿沼インター
9月28日 薩摩川内
10月13日 いなべ
10月13日 伊勢崎三室
10月13日 第2佐野藤岡インター
10月26日 第2伊賀インター
10月26日 関
11月10日 安中
11月10日 福島東
11月10日 豊田旭ヶ丘
11月10日 金沢県庁前
11月10日 鯖江
12月10日 伊勢原
12月10日 豊田陣中
12月25日 鹿児島空港
12月30日 橋本
年が変わるあたりで1年先の開業予定日まで決まっているということにも驚いたし、不景気なこのご時世にこれだけの勢いで新規出店を続けるってことには心底仰天していた。それが3月で出店がピタリと止まったから、私のような全くの部外者だって『はは〜ん、こりゃ何かあるに違いない』って思った。そうしたら今回の報道が出たから『なるほど〜』と納得していたわけ。
さっき気が付いたら
オープン予定ホテルのページは復活していた。ただ、掲載されているのは7月に開業する9店舗のみ。このうち鶴賀駅前別館は年初段階のリストには掲載されていなかったように思うのだが定かではない。
ルートインは、過去半年あまりのうちに出店計画を大幅変更した理由も説明すべきだと思う。それでないと「事実無根」という言葉は大変に軽いものになってしまう。
勝手に推測すると3月中旬以降出店がピタリと止まっていたのに7月に入って動きが出てきたっていうことは、むしろ金策のメドがついたってことなんじゃないだろうか? そこへ日経が不安を煽るような記事を流したのでムカっと来たのではないかと想像しておく。
ちなみに私は日経を長年読んでいるものの特別の思い入れはない。ルートインも何回か泊まったことがあり、さらにあちこちにオープンすれば便利でいいかも程度の極めてニュートラルな立場。
【続報】
消えた「事実無根」(7月7日)