2006年02月08日

イスラム教冒涜で国籍を剥奪された友人

 ムハンマド(マホメット)を風刺したマンガをめぐる騒動で、久しぶりにある友人のことを思い出した。インドで学生生活を送っていた時に知り合った彼は、バングラデシュ出身ながら国籍を剥奪されて無国籍状態だった。

 もともとは海外の文壇でも名前を知られた若手詩人で、国内では名士の扱いを受けていた。バングラデシュ独立戦争について書いた詩が国内の大手新聞に掲載されたことで人生は一変する。「あんなに多くの人が死んだのに、アラーもキリストもブッダも屋根の上でバイオリンを弾いていただけで何もしてくれなかった」という部分があったからだ。

 その日から嫌がらせなんでもんじゃない、家を焼き討ちされ、兄弟や親戚まで棒で叩きのめされた。本人は半殺しの目に遭って命からがらインドに逃げてきたという。そのインド政府も市民権を認めず、彼は10年近くも無国籍状態で不法滞在していた。

 一度聞いてみたことがある。「問題の詩を書いたことを後悔している?」って。彼は少し考えてから「自分は言葉の芸術家。自分の作品には自信を持っているし、最後まで責任を持つ。だから答えはノーだ。ただ、新聞社や家族に迷惑をかけたことはすまないと思う」と言った。

 バングラデシュが民主化しても祖国には帰れず、今はドイツの市民権を得てベルリンに住んでいる。サルマン・ラシュディ氏の話がニュースになるたびに思い出していたのに、最近はラシュディの名前も伝えられることがなくなってすっかり忘れていた。

 一般論で言えば、彼の詩はまったく誹謗中傷とは思えない。キリスト教徒も仏教徒も焼き討ちどころか抗議すらなかったという。「イスラム教を冒涜した」といわれてしまえばそれまでだが、それを理由に表現の自由を封じられ命まで脅かされるのは、地球上に住む1人の人間として私には理解できない。

 今回大問題になっている風刺マンガを私は見ていないので、真面目な批判なのか、おふざけの誹謗中傷なのか、自分としての判断ができない。それでも「表現の自由」と「宗教への敬意」ということになったら、友人のことがあるせいか私は「表現の自由」を重視したい。彼は今回のニュースをどんな気持ちで受け止めているのだろう。
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2006年01月22日

オサマ・ビンラディンの推薦でバカ売れの本

 アメリカの歴史学者ウィリアム・ブルムの著書Rogue State: A Guide to the World's Only Superpower(邦訳アメリカの国家犯罪全書がバカ売れしているという。なぜかっていうと、あのテロリスト、オサマ・ビンラディンの「推薦図書」だからだ。

 オサマ・ビンラディンが先日久しぶりに発表したメッセージの関連部分は以下の通り(AP通信がアラビア語から英語に訳したものをさらに私が日本語に訳す)。
ブッシュが嘘と抑圧を続ける決意をするのならば「アメリカの国家犯罪全書」を読むといいかもしれない。この本の前書きには「もし私が大統領ならばアメリカへの攻撃をやめさせる。まず、すべての未亡人と孤児、拷問を受けた人に謝罪し、次にアメリカによる諸外国への介入は永遠に終わったと宣言する」と書かれている。
 この発言が伝えられたことで、米アマゾンではこの本の売り上げランキングが20万5763位から一気に26位に躍進したそうだ。これを書いている日本時間22日の午後5時半の時点では20位にいることを確認した(ランキング画面)。

 しかし、オサマ・ビンラディンに評価された学者っていうのはいかなる心境か…と思ったら、ショックながら喜んでいるという。正直な人だ。日本の学者だったりしたら、顔をしかめて「迷惑です」とか言いながら、裏で印税の計算などしていそうな感じだけど。

 この本が数年前に出たとき、本屋でぱらぱらみただけで買わなかった。さっそく図書館で予約というか取り寄せる手続きをしたところだ。

 手続きをしてから気づいたのだが、実はオサマ・ビンラディンは勘違いしていて、上記の記述があるのは「アメリカの国家犯罪全書」ではなくて、ブルムのFreeing the World to Death: Essays on the American Empireというエッセイ集(こっちは邦訳なし)のカバー裏なのだそう。いずれにしてもブルムが相当お気に入りのようだ。
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2006年01月03日

イラク旅行の米高校生が無事帰国

 両親にも行き先を告げずにイラクへ行った米フロリダ州の高校生ファリス・ハッサン君(16歳)が1月2日、無事に帰国した。

 ハッサン君は高校で潜入ジャーナリズムについて学びイラク行きを決心。両親にも黙ったまま自分のお金で航空券を買い、12月11日に出発した。12月13日にクウェートに着いてから初めて両親に連絡をした。もっとも、クウェートからのイラク入国には国境で拒否されて失敗。ベイルート、レバノン経由でクリスマスに空路バグダッド入りした。

 私が想像するに、彼にとって幸運だったのはイラク人に見えることだ。彼自身はアメリカ生まれで当然アラビア語も話せないが両親はイラク出身。苗字だってウィリアムズとかじゃなくてハッサンだ。何も話さないで服装にも気を使えばイラク人に見えないこともないだろう。

 それでもずっと黙っているわけにはいかない。混雑する市場でアラビア語の会話集を取り出す危険に気づき、27日になってAP通信のバグダッド支局を訪問。自分は両親にも言わずにバグダッドにやってきたと話したため、AP通信が大使館に連絡、軍用機でクウェートに連れ出された末にアメリカに帰国したというのが一部始終だ。

 印象的なのは、マイアミ国際空港から自宅へ帰る父親の車の中でAP通信の電話取材に応じたハッサン君が語ったセリフだ。「僕がどんなに嬉しがっているかを知ってもらいたいんだ。マスコミはとても、とっても僕に親切だった」

 日本だったらどうだろう?「自己責任」「まだ高校生なのだから保護者の責任」「学校の指導方法に問題はなかったのか」などという議論が延々と続きそうだ。アメリカでもこれからそういう議論が始まるのだろうか。何はともあれ、ハッサン君が無事に帰国できてよかった。

【参考】
Boy, 16, smiling at end of his Iraq escapade(Miami Herald)
US teenager home after Iraq trip (BBC)
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2005年12月30日

2005年最大ニュースはイラクと津波−BBC調査

 英BBC放送がカナダの調査会社GlobeScanに委託して世界で実施した世論調査によると、2005年の世界のトップニュースにイラク情勢とインド洋大津波(発生は2004年)がトップに並んだ。

 調査は10月から12月にかけて世界27カ国(日本は入っていない)の3万2439人を対象に実施、「将来、歴史学者が2005年を振り返った場合に世界のどの出来事が最も重要とみなされるか」という観点から質問された。トップのイラク情勢と大津波を挙げた人はそれぞれ15%に上った。

 3位は米国を襲ったハリケーンのカトリーナとリタで9%。被災国のアメリカでは15%の人がトップニュースに挙げたのに対し、アフガニスタンとアルゼンチンはそれぞれ18%と、アメリカよりも大きなニュースとして受け止めている(アフガンなんてアメリカの心配しなくていいから自分とこの心配しなよ…って言いたくなった)。

 上位のランキングは以下の通り。
 1位 イラク情勢
 1位 インド洋大津波
 3位 ハリケーン・カトリーナとリタ
 4位 ローマ法王ヨハネパウロ2世死去
 5位 ロンドンの爆弾テロ
 6位 地球温暖化
 6位 鳥インフルエンザ
 8位 パキスタンの地震
 8位 バリ島の爆弾テロ
 当然といえば当然ながら明るいニュースは皆無。自然災害と人災が大部分を占めていて暗い気持ちになった。

【参考】国別の調査結果一覧表(PDFファイル)
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2005年12月03日

ザガットの人気エアライン調査

 米ザガットが人気エアラインの調査結果を発表した(原文=PDFファイル)。共同電では「航空会社格付け」となっているし確かにratingと書いてあるけど、安全性などを専門家が評価して格付けしたわけじゃなく、5277人の一般利用者がサービスや機内食などを採点した結果だから、人気調査みたいなもんだ。

 調査はエコノミークラスとプレミア(ファースト&ビジネス)クラスに分かれている。あたしゃエコノミークラスの女なので、プレミアには興味がない。で、エコノミークラスに限ると、総合評価は以下の順。
24点 シンガポール航空
21点 エミレーツ航空
19点 ANA
19点 タイ航空
19点 マレーシア航空
18点 JAL
18点 ヴァージン・アトランティック航空
18点 ニュージーランド航空
18点 オーストリアン航空
 日本の2社が割と高ランクなのが意外だ。個別項目では乗り心地、サービス、機内食、ウェブサイトの4項目があり、ANAはウェブサイトを除く3項目で上位にランクイン、JALはサービスと機内食で上位に入っている。

 マレーシア航空が上位なのもちょっとビックリ。しかも機内食でもANA,JALと並び4位に入っている。私がクアラルンプール経由でヨーロッパに行ったときは、機内食に味がなくて、しかも普通ならカトラリーと一緒についてくる塩・コショウがなかったのがすごく印象的だった。

 アメリカの航空会社は全滅状態、かと思ったらウェブサイト部門でコンチネンタル、アメリカン、ノースウエスト、アラスカの4社が上位に入っていた。ウェブサイト部門だけっていうのもちょっと悲しい(当然ながらウェブサイト部門はエコノミーとプレミアに分かれていない)。
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2005年10月25日

イラク人の45%が自爆テロに理解示す

 23日付の英テレグラフ紙によると、英国防省(MOD)がイラクの大学に委託して秘密裏に実施した世論調査で、イラク人の45%が米英軍に対する自爆テロは正当化できると回答したことが明らかになった(原文)。半数に達していないとはいえ、これはかなりの割合だ。英軍が管轄する南部マイサン州に限定すれば、なんと65%が自爆攻撃に理解を示したという。

 米英軍の駐留に「強く反対」している人は82%、米英軍が治安回復の責任を負っていると思う人は1%未満、平和・安定の状況は悪化していると思う人は43%、多国籍軍を信頼していない人も72%に上った。調査を実施したのは8月。

 素直に数字を受け止めるというよりも、いったん棚上げされた駐留英軍の縮小・撤退を実施する口実に使うつもりなのかなぁと勘ぐってしまう。「秘密調査」の内容がこんな時期に報道されるっていうのもタイミングがいい。

 昨年春、ヨルダンの友人から紹介してもらったイラク人からのメールの内容を紹介した(2004年4月22日の「イラクからメールが来た」)。彼が今でもアメリカに理解を示しているのか、それとも今では失望しているのか、知りたいところだが、残念ながら連絡がとれなくなっている。

【関連バックナンバー】
イスラム圏で自爆テロへの支持率低下(7月15日)
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2005年10月08日

知らぬが仏?

 ブルームバーグNY市長が6日、ニューヨークの地下鉄でテロが計画されている可能性があると警戒を促したことについて、情報の信頼性を疑う声やいたずらに不安を煽るだけだとの非難の声が上がって論争になっている。

 私が耳にしたのは「海外からアメリカに入国したテロリストが、10月の7日か9日にベビーカーかブリーフケースに仕掛けた爆弾を爆発させる」というもの。市長の最初の発表じゃなくて、あとでいろいろと情報が付け加えられていった内容だ。ところがニューヨークの警戒レベルは5段階の上から2番目のまま引き上げられなかったと聞き、おかしいなぁと思っていた。

 あとになってからマクレラン報道官がテロの脅威について「信頼性が疑わしい」と言ったことや、国家安全保障省も6日のうちに同省とFBIがテロ攻撃の情報を信頼性を疑問視しているとの文書を回したことが分かった。要するに市と連邦政府の対応がチグハグだったわけだ。

 最初の行き過ぎた警戒が収まると、NY市長選を控えてのパフォーマンスだという見方や、6日は市長選のディベートがアポロ劇場で予定されていたから、それをサボるための口実だったのではないかと勘ぐる人まで現れた(アポロ劇場はハーレムにあるから、観客の反応はプ元ブロンクス区長でプエルトリコ系の対立候補フェレール氏に好意的とみられていた)。

 単純に考えたら警告通りのテロは起きないだろう。テロリストたちは自分の命なんて惜しくもないんだろうけど、厳重警戒の中で行動を起こしても飛んで火に入る夏の虫で、狙っているような効果が得られない可能性が大きいから。だから、警告だけで何もなく終わりそうという意味では、ブルームバーグはこれからさらに非難されるかもしれない。

 でも、これで何もアナウンスしないままにテロが起きていたら、ブルームバーグが再選どころの騒ぎじゃなくなる。マスコミもこぞって「知っていたのに市民に知らせなかった。なんて酷い市長なんだろう」って叩くのは100%確実だ。先日のハリケーン「カトリーナ」のときだって、市・州・連邦政府の備えが十分じゃなかったって散々非難されたばかりだ。

 私はブルームバーグは好きじゃない。それでも、今回の件では彼を支持する。当局が決めたある一定の警戒水準を超える情報を入手したのだったら、私としては情報を公開してもらいたいと思う。それで何の準備ができるってわけじゃないけど、知らないうちに地下鉄の警備が厳重になっているなんてかえって不気味だ。

 ニューヨークに住む反ブルームバーグの友人は、「そんなこと言えるのはニューヨークにいないから。ビクビクピリピリして毎日暮らすなんてもうたくさん。『知らぬが仏』っていうでしょ」という。う〜ん、確かにその場にいないからこうして無責任なこと掛けるのかもしれない。 
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2005年09月27日

リンディ・イングランド有罪

 イラク・アブグレイブ刑務所での虐待事件で、リンディ・イングランド上等兵に有罪の評決が下った(AP通信)。刑期は報道によって違うものの最長で9年から10年らしい。早ければ現地時間の27日に言い渡されそうだ。

 有罪になってなんとなくホッとした。5月に彼女自身が有罪を認める証言をしたものの、あとになってから「上司に言われてやったことで本人は自分が何をしているかわきまえていたなかった可能性がある」とかいう話になり、5月の証言が採用されないことになってしまったから、ひょっとして無罪なんていうこともありえるのかな〜とちょっと引っかかっていたのだ。

 私は昨年5月に虐待の事実が明らかになった際に「イラク人虐待の象徴となった女」で、自分が彼女の立場だったら同じことをやっていたかもしれないと書いた。今でもその気持ちは全く変わらない。というよりも、自分の性格の悪さからいって、その場にいたら絶対に虐待に加担していた気がする。それでも、あれだけの悪事を働いたなら、上司がどうこういう前に1人の人間として当然罰せられるべきだという気持ちにも変わりはない。

 彼女に同情の余地があるとしたら、小柄な女性だったから注目されやすかったってことだろうか(久しぶりに写真を見たら随分太っていた…)。私が新聞社・雑誌社の編集長で何百枚もの虐待写真を入手したならば、やはり彼女の写真を一番大きく載せようとするだろう。男性兵士が虐待している写真よりもインパクトがあるからだ。それはゴシップ中心のイエロージャーナリズムだろうと高級紙だろうと変わらない。実際、私が見たすべての新聞のサイトは彼女の写真を大きく扱っていた。その結果、多くの人はリンディ・イングランドの名前は忘れていないのに、虐待に加担したほかの兵士の名前は全くといっていいほど覚えていないということになった。

 BBCによるとイングランドの上司で虐待を命じたとされるグレーナーJr.が禁固10年だから、彼女の刑期はもっとずっと短いだろうと予想する。上でリンクしたAP通信の記事(AOLニュース)併設のアンケートだと、「どれだけ厳しい量刑が適当か」との質問に「最低限」との回答は47%と半分近くを占める。「最大限」は30%で「中間」は23%。それでは「実際に量刑がどうなると思うか」には「中間」が52%、「最大限」が29%、「最低限」が19%となっているのが興味深かった。私が参考にした時点のアンケート結果は、日本時間午後9時前の段階で回答数は3万9699件。

 これとは別に、イラク関連で見つけたのは英オブザーバーの記事で、米政府がイラク復興費用の提供を国民に募ったところ、これまで集まったのは2週間でわずか600ドルだって話。思わず600の後ろにミリオンか何かが抜け落ちているのではないかと最後まで読んでしまった。天災なら募金をする気にもなるけど、米政府の呼びかけでイラク復興費用を募金する気には私だってなれないから、まあ当然の反応ではある。

【追記】
 イングランド上等兵には27日、不名誉除隊と禁固3カ月の罰が下った。(9月28日記)
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2005年09月23日

フリスト米上院議員にインサイダー取引疑惑

 2008年の大統領選に名乗りを上げると見られているフリスト米上院議員(共和党上院院内総務)に株式のインサイダー取引疑惑が浮上している。

 問題になっているのは病院経営HCA社の株式売却。Congressional Quarterlyとのインタビューで19日に明らかになった。HCAはフリスト議員の父親が設立、兄弟(兄か弟か不明)が名誉会長で3.7%の株式を保有(3月末現在)する大口株主でもある。取引の経緯は次の通り。
(1)フリスト議員が6月13日、自分と妻、子供が保有するHCA株をすべて売却するよう資産管理受託者に命じた。
(2)HCAの株価は6月22日に58.22ドルの高値をつける。
(3)7月1日までにフリスト議員の持分はすべて売却。
(4)7月8日までに妻と子供の持分もすべて売却。
(5)HCAは7月13日の寄り付き前、第2四半期の業績はアナリストの予想を下回ると発表。株価終値は9%下落して50.05ドルに。
(6)9月22日のHCA終値は前日比3.2%安の45.90ドルと約7カ月ぶりの安値。
 94年に初当選したフリスト議員は、医療業界や健康保険にかかわる立法業務に携わると同時にHCAの株式を保有していることが「利益相反」に当たると非難され、資産管理を受託者に任せてきた。今回の売却についてフリスト議員の広報担当は、いかなる利益相反も防ぐためとしているが、なぜこの時期に売却したのかについては説明がない。

 フリスト議員は次の上院選には出馬しないと既に明らかにしている。好意的に考えれば、大統領選でネガティブ・キャンペーンに使われる恐れのある材料は今のうちにキレイさっぱり消滅しておきたかったってところかもしれない。それにしても時期が悪かった。米証券取引委員会(SEC)が調査に乗り出すかどうかは今のところ不明。

【参考サイト】
Senator Sold Stock Before Price Dropped(Washington Post)
Frist Stock Sale Raises Questions on Timing(Washington Post)
Senate Leader Explains His Sale of a Stock That Then Plummeted (New York Times)
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2005年09月04日

カトリーナにまつわるデマ(と信じる)

【追記】下記の内容はブログ筆者のロビンソン氏が「確認が取れない」として、該当部分を撤回しました。(9月13日確認)

 米ブログ界で一両日注目を集めている記事がある。公民権活動家のランドール・ロビンソン(Randall Robinson)氏がニュースサイトThe Huffington Post内で書いているブログの記事だ。略歴によると彼は外交問題の専門家で著作も数多くあるらしいが、ほとんどのサイトは「公民権活動家」としているので、私もそれに従っておく。

 2日付のNew Orleansと題した記事は、あまりにも衝撃的なエピソードで始まる。
It is reported that black hurricane victims in New Orleans have begun eating corpses to survive. Four days after the storm, thousands of blacks in New Orleans are dying like dogs. No-one has come to help them.
ニューオリンズの黒人のハリケーン被災者は生き延びるために死体を食べ始めたと伝えられている。ニューオリンズの何千人もの黒人はハリケーンの4日後、犬のように死につつある。誰も彼らを助けに来なかった。=らくだ訳
 ロビンソン氏は「伝えられている」と書いているとはいえ、彼の情報源は記事を最後まで読んでも明らかにされていない。ニュースサイトで一生懸命に検索しても、それらしい記事は見当たらなかった。彼の記事に触れている多くのブログも同様で、幸いにも私が見た限りでは上記の内容を信じている人はいない様子だ。

 ロビンソン氏の記事自体にもたくさんのコメントがついていて、当然ながら情報源を明らかにしてほしいという要望も目につく。これに対するロビンソン氏の反応はいまのところ見られない。無責任な人だ。

 今の段階で上記の内容は全くのデマだったとスッキリキッパリ判明したわけじゃない。でも、私には到底信じられないし、信じる根拠もない。大きな自然災害の時にはデマが流れやすくなるといわれる。なるほどこういう情報が広がっていくんだなと、その一例に触れて納得している次第だ。
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2005年09月03日

ペットとスクールバス

 アメリカはハリケーン「カトリーナ」に襲われた一大ショックの茫然自失状態から、第二段階に進んできたように感じる。いろんな人が「州や市当局の対応が悪い」「連邦政府が治水予算を削ったから堤防を強化できなかった」「州兵がイラクに派遣されたので救助活動がはかどらない」「被災者の大部分は黒人で、救助が進まないのは人種差別が背景にある」「カトリーナが来る数日前から避難を呼びかけていたのに、それに従わなかった人の自己責任」などといい始め、ありとあらゆる「非難の対象」探しが始まった。

 休暇を切り上げたブッシュ大統領がワシントンに戻りがてら上空から被災地を“視察”し、ワシントンで専用機から降りてきたときにペットの黒い犬(名前はバーニー)を抱えていたのにはビックリした。あれはイメージ戦略上はかなりマイナスだと思う。あれを見ただけで“視察”という言葉は私の頭の中では“高みの見物”に変身してしまった。一方、ニューオリンズのスーパードームからバスで再避難する人たちはペットの持ち込みを禁止された。ある少年は警官に犬を取り上げられ、吐くまで泣いたという(AP通信)。非常時なのだから仕方ないとは思う。でも、もしこの少年があの大統領の映像をみていたらどんな気がしただろう。

 Survey USAの世論調査によると、ブッシュ大統領のハリケーン対応への反応は以下の通り。

      8月30日  9月1日  9月2日
評価する   48%   46%   40%  
評価しない  39%   44%   53%

 わずか数日で「評価しない」が「評価する」を逆転してしている。回答者の人種別に2日の最新調査をみると、黒人の間で「評価しない」が71%、「評価する」が19%の一方、白人はそれぞれ49%と44%になっている。もともとアメリカ南部は黒人が多いと分かっちゃいるけど、被災者の映像をみていると圧倒的に黒人が多いから、この調査結果は納得がいく。

 ハリケーン関連で「あんたはエライ!」と思った人は、いってみれば犯罪者で、ジャボー・ギブソンという18歳の黒人青年だ。ニューオリンズでスクールバスを盗み、まったく面識のない約100人の被災者を乗せ、新たな避難場所に指定されたテキサス州ヒューストンのアストロドームに向かったのだ。7時間かかってアストロドームに一番乗りした彼らは、公式に仕立てられたバスじゃなかったせいか、最初は受け入れてもらえなかったという。中には生後8日の赤ちゃんもいたっていうのにね。お役所のやることはどこも大して変わらないみたいだ(News Channel 5)。

 生まれて初めてバスを運転したギブソンは、「人々を助けられたのだから、(バスを盗んだことで)責任を問われても構わない」と言っている。ニューオリンズにはこんなにたくさんスクールバスがあった(写真)のだから、こんなことになる前に車を持たない人たちをどこかに避難させることができればよかったんだけど、いまさらそんなことを言っても遅い。彼が罪を問われないことを祈る。 
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2005年09月02日

スイスも航空ブラックリスト発表

 フランスとベルギーが先月末、乗り入れを禁止する航空会社のブラックリストをそれぞれ発表したのに続き、スイスの航空当局も1日にブラックリストを発表した(BBC)。

 といってもリストアップされたのはフラッシュ・エアラインズ(エジプト)とエアー・バン・エアラインズ(アルメニア)の2社だけ。エアー・バンは日本では知られていないものの、ベルギーもブラックリストに入れていたから、本当にかなりヤバイんだろう。

 乗客としては、乗り入れ禁止の前段階で「特別監視中」とか「要注意」リストみたいなのを発表してくれるとありがたい。いろいろと利害関係が絡んで難しいとは思うけどね。当局がだめならどこかの企業が「勝手格付け」みたいなのすればいいのに。「はい、JALは不祥事が相次いだからジャンク級に格下げね」とか…。

 乗り入れ禁止後に特定の航空会社が危ないと言われても、その情報を役立てる機会はあまりないもんな。ま、海外発着で飛行機に乗る場合の選択基準にはなるかもしれない。ここのところ発表されたブラックリストは、個人的にはまったく影響ないな。

 英国が2004年1月に発表したブラックリストによると、赤道ギニア、ガンビア、リベリア、タジキスタン共和国のすべての航空会社のほか、以下の航空会社が乗り入れを禁止されている。
スター・エアー(シエラレオネ)
エアー・ユニバーサル(シエラレオネ)
カメルーン・エアラインズ
アルバニアン・エアラインズ
セントラル・エアー・エクスプレス(コンゴ民主共和国)


【関連バックナンバー】
航空会社ブラックリスト−仏とベルギーが発表(8月29日)
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2005年08月29日

航空会社ブラックリスト−仏とベルギーが発表

 フランスの民間航空局(DGAC)とベルギー運輸省が29日、両国への運航を認めない航空会社のリストを発表した(BBC)。

 フランスのブラックリストに載っているのは以下の通り。
高麗航空(北朝鮮)
エアー・セントトーマス(米領ヴァージン諸島)
インターナショナル・エアー・サービス(リベリア)
エアー・モザンビークとその子会社
プーケット・エアー(タイ)
 4先週読んだ前ぶれ記事で4社の名前はあらかじめ出ていたけど、プーケット・エアーの名前は初めて出てきた。プーケット航空は安全せん云々よりも経営状態のもんだいだと思う。ちょうど1週間前、韓国・仁川空港で各種料金未払いのために差し押さえられたジャンボ機(朝鮮日報)はどうなったたんだろう? 日本にもチャーター機が来ていたのに、インド洋の津波で観光客が激減したのが痛手になった。こんな状態ではフランスのブラックリストを別にしても、風前の灯といえそうだ。

 ベルギーのブラックリストは以下の通り。
アフリカ・ラインズ(中央アフリカ)
エアー・メンフィス(エジプト)
エアー・バン・エアラインズ(アルメニア)
セントラル・エアー・エクスプレス(コンゴ民主共和国)
ICTTPW(リビア)
インターナショナル・エアー・ツアーズ(ナイジェリア)
ジョンソンズ・エアー(ガーナ)
シルバーバック・カーゴ・フレイターズ(ルワンダ)
サウス・エアラインズ(ウクライナ)

【関連エントリー】
スイスも航空ブラックリスト発表(9月2日)
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2005年07月24日

英警察、テロと無関係のブラジル人を射殺

 ロンドンで起きた2回目の爆破事件に関連があるとして22日に地下鉄ストックウェル駅で5発の銃弾を打ち込まれて射殺された人物が、事件とまったく関係のないブラジル人のJean Charles de Menezes(27)さんだったと発表された。

 彼は独身の電気技師。英国には合法的に滞在していてロンドンには3年間住んでいたという。ロンドン警察は彼の「服装と態度」が誤解を招いたとしているが、それに加えて住んでいたところもまずかった。

 前日の事件で爆破しなかったリュックの中から彼の住んでいるロンドン南部Tulse Hillの住所を示すものが見つかって私服警官が張り込んでいたところ、野球帽に青いスウェット、バギーパンツ+夏には不自然な厚手のコート姿で彼が午前10時ごろに家から出てきたという。地下鉄駅に向かったところで警官は逮捕を決意し制止を命じた。彼はそれを無視、改札を飛び越えて地下鉄に飛び乗ろうとした。厚手のコートを着ていたものだから、その下に爆発物を巻きつけている可能性があるとみなされ、瞬時に5発の銃弾を撃ち込まれた。

 彼の身元が判明する前から議論はあった。ほかの市民も回りにいる中で至近距離から5発も撃つ必要があったのかどうか。自爆する恐れのある人間に対しては、体ではなくて頭を狙うのが鉄則だそうで、『下手に負傷されて自爆されたらさらに被害が広がるから、しょうがないのかな』と、それなりに納得していたのだが、まさかこんなことになるとは…。こういうときに「遺憾」とよく言われるが、真心が感じられない言葉だ。字面だけで反省・後悔を示す便利な言葉だと思う。 

 彼がなぜ逃げたのか分からない。相手は私服だったっていうから、警官とは思わずヤバそうな相手だと思って逃げたのかもしれない。「警察だ!」と言われて信じなかったのかもしれない。こんな形でテロ関連の死者が1人増えたってことが、ただ悲しい。テロにまったく関係ない英国在住のイスラム教徒も戦々恐々としているに違いない。

【参考記事】
Man shot in terror hunt was innocent young Brazilian(The Observer via The Guardian)
Shot man not connected to bombing(BBC)
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2005年07月21日

ロンドンでまた爆発

 ロンドンの地下鉄駅3カ所とバスでまた爆発があった。今回は小爆発(small blasts)だそうで、いまの段階ではけが人が1人いると伝えられているだけなので、2週間前のような大惨事ではないらしい(BBC)。

 また爆発があったと聞いた瞬間、2週間前のテロの第一報に接したときよりもゾッとした。というのも、友人と「夏休みに海外旅行をするとして安全なのはどこか」という話になり、「あんなことがあったロンドンなら警備が厳重だろうし、自分の回りの人を自然と観察するようになっているでしょ。いくらテロリストでも動きにくいだろうから安心できるんじゃないの?」ということになっていたのだ。

 テロっていうのは常識が通用しないと分かっていたつもりなのに、全然分かっていなかったようだ。日本でもテロがあってもおかしくないんだろうな。私に何ができるわけじゃないから、『どうぞテロに遭いませんように』と祈りながら普通どおりに生活するしかない。
posted by らくだ at 23:16 | Comment(5) | TrackBack(1) | 国際ニュース | 更新情報をチェックする