2005年12月18日

NYTが政府の圧力で報道を自己規制

 ブッシュ米大統領が2002年、国家安全保障局(NSA)に対して令状なしで個人の電話を盗聴したりメールをチェックしたりする権限を与えていたことが16日付のニューヨークタイムズで明らかになり、その後大統領本人がそれを認めたことで、アメリカは大騒ぎになっている。私がその事実以上にびっくりしたのは、ニューヨークタイムズが1年前からその事実を知っていながら、政府当局者の要望を聞き入れて報道を見送っていたことだ。

 16日付のニューヨークタイムズ(無料登録していないと開けないかも)は、9段落目が次のようになっている。
The White House asked The New York Times not to publish this article, arguing that it could jeopardize continuing investigations and alert would-be terrorists that they might be under scrutiny. After meeting with senior administration officials to hear their concerns, the newspaper delayed publication for a year to conduct additional reporting. Some information that administration officials argued could be useful to terrorists has been omitted.
 簡単に訳すと、「米政府は、(9・11テロ関連で)進行している捜査を阻害し潜在的なテロリストに警告を与えることにもなるとして、この記事を掲載しないようニューヨーク・タイムズに要請した。当紙は複数の米政府高官と会って彼らの懸念を聞き、追加取材をするために1年間掲載を遅らせた。テロリストにとって有益な情報になりえると当局者が主張した情報は省略した」ってところだ。

「戦時中」ゆえの「自己規制」「自己検閲」ってことだろうか。そんなことは昔からどこの国でもあり、そのたびにメディアは権力に屈したことを反省してきたんじゃなかったのか…。それに令状なしに電話での会話を盗聴したり、メールをチェックするっていうのは憲法違反じゃないんだろうか? 政府の圧力に屈してしてしまったニューヨーク・タイムズには幻滅した。

 米Editor & Publisherによると、ニューヨーク・タイムズが情報を入手したのは、1年前といっても米大統領選の前らしい。もし、これが大統領選の前に明らかになっていれば、そしてハリケーン・カトリーナが今年じゃなくて去年米南部に上陸していたら、なんていっても空しいだけか…。
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2005年10月21日

報道の自由度ランキング−日本は37位

 国際的なジャーナリスト連合の国境なき記者団は「2005年度の報道の自由度ランキング」を発表した。日本は37位で前年の42位から順位を上げた。

 日本はスペイン(40位)、イタリア(42位)アメリカ(44位)よりも自由度が高いと評価された。その半面、ベニン、ナミビア、カーボベルデ、南アフリカ、ジャマイカ、エルサルバドルよりも下位で、マリと同等。まぁ、どう評価すればいいのかよく分からない位置にいる。

 アメリカが前年の22位から大きく順位を下げたのはニューヨークタイムズのジュディス・ミラー記者が収監されるなど、司法のジャーナリズム介入があったため。

 上位ランクは以下の通り。20位までに入ったのはほとんど全て欧州諸国で、違うのはニュージーランドとトリニダード&トバゴだけっていうのが寂しい。というよりも欧州偏重だぞって怒るべきか…。でも、客観的に各国の報道を比較したことがないから、そうも言い切れないんだよな。
 1位 デンマーク
     フィンランド
     アイスランド
     アイルランド
     オランダ
     ノルウェー
     スイス
 8位 スロバキア
 9位 チェコ
     スロベニア
11位 エストニア
12位 ハンガリー
     ニュージーランド
     スウェーデン
     トリニダード&トバゴ
16位 オーストリア
     ラトビア
18位 ベルギー
     ドイツ
     ギリシャ

 ランク下位の10カ国は167カ国中で最下位だった北朝鮮、エリトリア、トルクメニスタン、イラン、ビルマ、リビア、キューバ、ネパール、中国、ベトナムの順。
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2005年10月01日

ミラー記者と朝日新聞

 ニューヨーク・タイムズのジュディス・ミラー記者って格好よすぎる。取材源を秘匿して法廷侮辱罪に問われ、7月に収監された人だ。9月29日に釈放され30日に証言した。彼女は圧力に屈して「口を割った」わけじゃない。取材源自身が証言しても構わないとGOサインを出したからだ。取材源はチェイニー副大統領の首席補佐官リビー氏だってことはかなり前から噂されて周知の事実になっていたが、それでも彼女は本人との約束を守り抜いたわけだ。

 そのミラー記者が30日の証言後、CNNに出演した。彼女の発言で印象に残ったのは次のくだり。
 私はジャーナリストと取材源の秘密の関係を維持することがいかに重要かという信念を示すため、85日間にわたって収監されました。信じてもらいたいのですが、収監を望んでいたわけではありません。でも、2つの条件がそろわなかったら、私はもっと長期間にわたって拘束されてもかまいませんでした。その条件は取材源自身の個人的な許可と証言(内容)の制限です。この両方がそろわなかったら、私は証言しませんでした。…(略)…とても長かった私の収監が、報道者と情報源の絆を強めると私は期待しています。
 司法の介入に屈しなかったジャーナリストの自信がすがすがしい。格好よくて、感動して、ブルブルふるえちゃったぐらいだ。

 翻って日本では、朝日新聞とNHKの問題に朝日新聞が結論を出した(あれが結論らしい)。朝日のサイトには第三者がつくるNHK報道委員会の見解社長の見解朝日新聞社の考え方と、3つ載っている。結論はざっくりいって「取材に問題はあるが、訂正は必要ない」ってことだ。えっ、これで終わりなの? マジですか?

 だって1月19日付の「朝日新聞報道にNHK抗議 番組改変巡る記事で」っていう記事なんて、朝日新聞広報部のコメントとして「朝日新聞社が18日付朝刊に掲載したNHK問題の記事は、これまでの取材内容を正しく伝えたものです。取材方法も適正であったと考えています」って出ているんですけど。

 1月21日の「NHKに訂正・謝罪求める 番組改変問題で本社通告書」って記事だって残っている。NHKに送った通告書について、朝日が1月21日の記者会見で「『誠意ある回答がない場合は法的措置を取らざるをえないことになる』と話した。」と出ている。NHKからなんて満足のいく回答があったはずないんだけど、法的措置はどうなってんの???

 取材源の秘匿どころか取材源が自らノコノコ出てきて「それは私でした」と記者会見まで開いているのに、真実が明らかにされないでウヤムヤにされてしまうって不思議なことだ。朝日はあくまで「取材時には記事にしたことを確かに言ったのに、あとになってから違うことを言い出した」という立場みたいだ。それを言い張るなら、録音したことはゴメンナサイしちゃったとしても、テープを出して報道した内容に白黒つけたたほうが報道機関としてのスジは通せると思うのだけどね。

 「朝日新聞は『取材のプロセスや取材内容の詳細は原則として明らかにしない』『原則として無断録音はしない』という姿勢を今後も堅持していく考えです」というのがなんだかしらじらしくて笑えた。一般論だと取材源を守るための原則に聞こえるんだが、朝日の場合は自らの保身のために使っているのが情けない。ニューヨーク・タイムズのミラー記者の例と比べると、なんの関係もない私が1人の日本人として日本のメディアに恥ずかしさを感じるぐらいだ。

  毎日新聞の「NHK特番問題:朝日、新事実示せず幕引き 身内も批判」という記事の後半に朝日の秋山社長と吉田慎一前編集局長の記者会見の内容が出てくる。
 −−取材者が処分されてないが。

 吉田氏 社内規定で情報管理者は所属長になっている。

 −−問題はこれで決着すると考えるか。

 秋山氏 誠意は尽くした。納得できないなら法的対応を取って頂いても結構だ。(取材対象の)安倍晋三議員らについては、この見解を知らせ、どう対応されるのか見守りたい。
 処分されるのは取材した人間じゃなくて所属長という社内規定があるんだ。検証前に若手記者をスパッと解雇した長野の捏造メモ事件と比べると、こっちの記者はずいぶん保護されているような気がするんだけど気のせい? 私は担当記者が記者会見すべきだったと思っている。ホリエモンじゃないけど、記者だって取材される側の気分を味わえばいいんだ。それに法的措置を取るっていっていたのは朝日じゃなかったの? 開き直りですか? めちゃくちゃだ。

  で、これからは取材を受ける人は逆録音をする(取材を受ける側が録音する)といい、と提案してみる。自分が言っていないことを書かれたら、テープを証拠に反論できるし。一般人だってネット上で反論するできるでしょ。「私は○○新聞○○記者のインタビューを受けましたが、話したのと違うことを書かれてしまいました。私が録音した一問一答は次の通りです」なんて公開する人が増えたら、マスコミも変わるのでは? インターネットの普及により、かつては存在しなかったマスコミ監視網が出来てきたことを、マスコミの人はどれぐらい自覚しているのだろう。

【関連バックナンバー】
朝日新聞の説明(7月25日)
米メディアに自主規制の動き(7月10日)
朝日新聞とNHKが全面対決(1月20日)
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2005年09月29日

メディアの信頼度が上昇

 といっても、アメリカの話。米Editor & Publisherがギャラップの調査として伝えたところによると(英語の原文)、50%のアメリカ人はメディアを信頼していると回答、その割合は前年同期調査の45%から上昇した。ハリケーン「カトリーナ」関連の報道が貢献しているらしい。

 内訳は「とても信頼している」が13%、「かなりの程度信頼している」が37%。信頼していないとの回答は49%(前年は55%)で、「それほど信頼していない」が37%、「まったく信頼していない」が12%だった。

 日本でこんな調査をやったら信頼感は右肩下がり? 少なくとも現段階では信頼感は低そうだ。私が答えるとしたら「それほど信頼していない」だな。
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2005年09月18日

NYTが一部コンテンツを有料化

 米ニューヨーク・タイムズ紙が19日、ウェブサイトのコンテンツを一部有料化、Times Selectというサービスを導入する。

 クルーグマン、フリードマン、クリストフなどのコラムが無料で読めなくなってしまうのは寂しい。崇拝しているとかそんなんじゃなく、いろんな意味で楽しみにしていたから。Times Selectは1年間49.95ドル(18日いっぱいは39.95ドルの割引料金)。1981年以降の過去記事の検索もできて、これが近く1851年以降の記事まで対象になるというから、決して高くないと思う。もう国会図書館でマイクロフィルムをクルクル回さなくて済むんだし。

 申し込むなら10ドル安いきょうのうちだ。すご〜く迷っている。絶対的には高くないと思うものの、ネットを通じて無料で入手できる有料情報があまりにも多いため、わざわざ有料サービスに申し込まなくても必要な情報にはアクセスできると予想している。コラムはあくまで読み物だしなぁ。

 ウォールストリート・ジャーナル、次いでフィナンシャル・タイムズがそれぞれウェブサイトで有料サービスを始めたときも、かなり迷った末に結局申し込まなかった。今はそれぞれのサイトで無料でアクセスできる情報だけで満足している。この分でいったら、ニューヨーク・タイムズも申し込まないんだろうな、やっぱり。ひょっとして、どれか有料サービスを選ぶのならSalonかもしれない。
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2005年09月16日

朝日新聞の検証

 朝日新聞が捏造メモ事件の検証を発表した。朝刊に掲載された記事は3ページにおよぶらしいが、私は購読していないのでネットで「朝日新聞から」というページに掲載されているのを読んだだけだ。

 これを読んで分かったこともあれば、依然として分からないこともある。率直な印象としては「世界に名だたるクオリティペーパーとかいわれてても朝日新聞てたいしたことないじゃん」、「横の連携、情報の共有が恐ろしく希薄でヘンな組織」ってところ。

 まず、解雇された記者が捏造メモを書くきっかけとなった取材のお願いは、こんな内容だったという。
自民党政調会長の亀井静香氏が13日か14日に長野県に行って、田中康夫・長野県知事と会談した模様だ。具体的なことはわからないので情報があれば連絡してほしい。
 なんだ、程度の強弱はあれ、最初から「長野県で会った」っていう先入観があったんじゃない。お願いの段階で「長野県に行って」となっている理由について具体的な説明がないのはなぜだろう。13日に「『亀井氏に近い新党関係者から「今日、亀井氏が田中知事に会いに行っている』と聞いた」というから、その際に場所が長野県だという感触があったのかな。取材先への配慮は分かるが、どうみてもこれは説明不足だ。

 しかし、このお願いもなんだかなぁ。デキの悪いサラリーマンが書く社内メモの例として取り上げたくなるほどだ。私のところにたまに送られてくるメールを思い出した。旅行記のサイトをやっているせいか「○○について何でもいいので情報をください」とお願いされることがある。○○に入るのは国名だったり、温泉名だったりする。気合を入れて丁寧な返事を書いているうちに分かってきた。こういう人たちは「そんなことはとっくに知っているので、別のもっといい情報をください」と再度メールを送って来るか、お礼の返事もなくそのままになるかのどちらかが圧倒的に多い。それで最近は「具体的な質問にはお答えできますが…」と返事を出すことにしている。朝日のこのお願いも、私にとっては返事を書きたくないメールだな。

 記事を書いた記者と捏造メモ記者(以下捏造記者)の間に何人も入っているせいで、検証の内容はややこしい。一度読んだだけじゃ理解できない。要するに政治部の記者が記事を書くのに上司が地方支局のトップに材料の提出をお願い、それが指示として下々に回ってきたという流れみたいだ。捏造メモも政治部の記者宛てではなく政治部のキャップにメールで送ったというのだから、記事を書いた政治部記者と長野総局の捏造記者との間で直接のやりとりはない。伝言ゲームみたいだ。

 部外者にしてみれば、政治部と地方の記者なんて互いに活発に情報交換しているようなイメージがあるのだが、実際はお役所くさいうえに恐ろしく風通しが悪いとみた。こんなにまどろっこしい流通システムなのに、要所でチェック機能がまったく働いていないというのだから始末におえない。取材メモなんて社内の関連部署で共有して誰でも見られるようにした上、「確認は東京ではできなかったから長野で頼む」みたいにして、それを見たら上司の指示待ちなんてしないで自ら動くみたいにできないのだろうか。

 この捏造記者が入社以来564本の記事を書いて訂正を1本も出していないうえ、取材先や読者からの苦情もなかったというから、自分が書く記事については細心の注意を払っていたんだろう。検証を読んだうえで想像してみると、東京の政治部記者が書く記事なんて、彼にとってはどうでもよかったのではないかと思えてくる。それで何が何でも取材しようという気になれず、適当につじつま合わせをして『記事を書く人が確認するだろう』と思っていた。ほかに関係ある人が何人もいながら、みんな透明人間または木偶の坊と化していた。逃げられなくなったのは康夫ちゃんが記者会見という公の場でばらしちゃったからだ。他人事ながらなんか空しい。

 これは決して個人の問題じゃなく、組織がどこかおかしいのだ。ほかの新聞は大丈夫なのか。新聞に書いてあることがますます信じられなくなっていきそうだ。

【関連バックナンバー】
氷山の一角?(8月30日)
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2005年09月13日

「カトリーナ」報道に見直しの動きも

 お気に入りの米ブログにNY大学ジャーナリズム学科アソシエート・プロフェッサーのジェイ・ローゼン氏が書くPress Thinkがある。お気に入りというと語弊があるかもしれない。個々のエントリーが長く英語も難しいうえにアカデミックな内容なので、多くの場合は読み出しても途中で挫折してしまうからだ。

 そんな私でも8日付の最新エントリーは思わず全文読んでしまった。内容はハリケーン「カトリーナ」についての報道について。各メディアはブッシュ政権の対応が遅く不十分だとして思う存分に糾弾している。まるで昨年の大統領選の仇をカトリーナでとるかのよう。マスコミの攻勢はウォーターゲート事件以来の厳しさとの声もあるほどだが、ローゼン氏はそういった報道を冷静かつ客観的に検証している。印象に残ったのは次の部分だ。
Spine is always good, rage is sometimes needed, and empathy can often reveal the story. But there's no substitute for being able to think,and act journalistically on your conclusions. What is the difference between a “blame game” and real accountability? If you’ve never really thought it about it, your outrage can easily misfire.
 硬い文章なので勝手に意訳してみるとこんな感じだ。「気骨はいつだって価値があるし、時には怒りだって必要だ。感情移入(の結果)が記事になることだってよくある。しかし、考察に代わるものはない。「非難ゲーム」と説明責任の違いはなんだろう? もし、あなたがそれを真剣に考えていなかったら、あなたの怒りは意図した効果を全くもたらさないかもしれない」

 そして、市当局、州政府、連邦政府それぞれは何に対して責任があるのかを考えて自分なりの結論を出していなかったら、満足に取材することは不可能だというのだ。これはカトリーナだけの問題じゃなくて、日本での災害・事故報道でも感じることがある。何かが起きると冷静な考察はどこへやら。短絡的な「犯人・責任者」探しをして感情的に叩いたり、上っ面だけ取り繕った内容の乏しいインタビューなどが多いような気がする。

 CNN/USA Today/Gallupが9月8−11日に実施した世論調査では、回答者の49%が「メディアは責任者探しに時間を使いすぎる」と答えた。フロリダの陸軍州兵からは、アンドルーのときは相当数の州兵が被災地に入るのに5日かかったのに、カトリーナは3日だったから連邦政府の対応は遅くないなんていう声も挙がっている。(post-gazette.com

  ここ数年、普通の人が情報を自由に発信できるようになったのは(たとえ内容が玉石混交でも)、喜ばしい。私はつい何年か前まで、新聞やテレビで伝えられることを額面通りに受け止めてきた。インターネットの普及により、マスコミの報道を客観的に見直せる機会ができるなんて考えてもいなかった。これまで構造改革なんてまったく無縁だった既存の大手マスコミも、あと何年かしたら大きく変わっているだろう。
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2005年08月03日

窓からですか?

 エールフランス航空のA340がトロントのピアソン空港でオーバーランの末、黒煙を上げて炎上。309人の乗客乗員は全員無事で、カナダのラピエール運輸相は「奇跡」と表現した(BBC)。派手に燃え上がったのは、全員避難したあとだったようだ。よかった。

 続報で避難した乗客のインタビューを聞いた。女性の乗客だった。100%正しく聞き取れた自信はないが、こんなやりとりがあった。
テレビの人:How did you get out? (どうやって脱出したんですか?)
乗客:I jumped.(飛び降りました)
テレビの人:From the window? (窓からですか?)
乗客:No. (From)the door.(いいえ、ドアよ)
 インタビューしていた人は、もちろんすごく真面目だった(日本人の話す英語に聞こえた)。こっちは飲んでいたウーロン茶を噴き出しそうになり、鼻に入って痛くなっちゃったよ。飛行機の窓から脱出するなんて、これまで1秒だって考えたことなかった。この人はいつもどんな飛行機に乗っているのだろう?

 物理的に不可能とはいえないかもしれない。窓がきれいサッパリと割れるか吹き飛べばね。その場合、頭から出るのか、足から出るのか…。やっぱり頭からかなぁ。そしたらそのまま地面に頭から落ちそうだな。

 こっちはすごく真剣に見ていたのに、「窓からですか?」のひとことで、すっかりおちゃらけ気分になってしまった。
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2005年07月25日

朝日新聞の説明

 ことし1月にあったNHKの番組改編&朝日新聞の虚偽?報道問題について、朝日新聞が朝刊の2面を使って検証(というほどでもなく説明か)をしたそうだ。私は朝日を購読していないので、ホームページ上で公開された以下の情報しか知らない。
1.NHK番組改編問題1−読者の皆様へ
2.NHK番組改編問題2−取材の総括
3.NHK番組改変問題3−検証・番組改編の経緯
4.NHK番組改変問題4−NHKの見解 政治家の指示ない
5.NHK番組改編問題5−松尾武元放送総局長
6.NHK番組改変問題6−当時の取材 中川昭一議員
7.NHK番組改変問題7−当時の取材 安倍晋三議員
8.NHK番組改編問題8−取材・報道への指摘について
 半年もたって出てきたのだから鋭く切り込んでいるのだろうと思って読み始めたらアテがはずれた。歯切れが悪い。そもそも朝日は裁判で白黒をはっきりさせるから説明はしないという立場だったと記憶している。なんで今ごろになって検証なんてする気になったんだろう。ひょっとして、フィリピン日本兵発見の大誤報を打った産経新聞が13日に「朝日NHK問題『頬かむり』は許されない」という社説を掲載したのに触発されていたりして…。

 朝日は「両立しない証言が存在し、報道から半年にわたる取材を積み上げてもなお、真相を解明できない部分が残っています」としている。というか、スッキリ解明できた部分なんてあるんだろうか? 少なくとも私には何がいいたいのかよく分からない文章だった。

 分かったのは「現時点では記事を訂正する必要はない」と朝日が判断してるってことだ。理由は1月時点で安倍・中川・NHK松尾各氏の言ったことには「相互に矛盾がなく、具体的・迫真的な表現が随所にあり、重い」と今でも考えているから。ところが、その自信は心もとない。「当事者が否定に転じたいま、(略)これらを直接裏付ける新たな文書や証言は得られておらず、真相がどうだったのか、十分に迫り切れていません」だものね。

 また当時の取材内容は一問一答形式で書かれていて、あたかも録音されていたかのような気配ながら、取材テープの存在についても明らかにされていない。朝日の説明は以下の通り。
取材・報道に関して、朝日新聞は「取材のプロセスや取材内容の詳細は原則として明らかにしない」という姿勢をとってきました。相手が誰であれ、報道する側の都合で勝手にそれらを公表していては、取材行為全般が信頼を失い、将来の自由な報道に支障を来すからです。今回も、取材記録そのものや取材過程の全容について詳細には明らかにできないと考えています。
 これもなんかズレてる。ついついアメリカで先日起きたことと比較してしまう。あれは国家機密(CIA工作員の名前)の漏洩についてだから、比較対象にならないかもしれないけどさ。ニューヨーク・タイムズの記者は取材源の公開をあくまで拒んで収監されたんだったな(なんたる違い!)。

 こっちは取材源の秘匿どころか、取材に応じた人物(NHK松尾氏)がホイホイ出てきて記者会見までして報道内容を否定しいる。朝日の上記の説明は、ニューヨーク・タイムズのような例には当てはまるのであって、今回のように情報提供者記者が自ら報道を否定していたら、「報道する側の都合で勝手にそれらを公表していては…」て話じゃないでしょ。記者が出てきて説明するのが最低限の誠意だと思う。
 
 (もしかして朝日本紙では詳細に説明されていて、読むと疑問が雲散霧消するのかもしれない。上記はあくまで朝日新聞のホームページ上に公開されている説明を読んだ感想)

【関連バックナンバー】
看板に偽りあり(NEWS23)(2月8日)
朝日新聞とNHKが全面対決(1月20日)
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2005年07月10日

米メディアに自主規制の動き

 米Editor & Publisherによるとクリーブランドで発行されている地方紙プレーン・ディーラーは2本のスクープ記事を掲載しないことを決めた。違法に持ち出された書類が情報源のため、同紙の弁護士は司法の介入があれば勝ち目がないとみているからだ。

 ロンドンのテロのせいで書く機会を逸してしまったが、先週ニューヨークタイムズのジュディス・ミラー記者が取材源の秘匿を理由に連邦大陪審への取材メモの提出と証言を拒否、法廷侮辱罪で収監された。外交官ジョセフ・ウィルソンの妻バレリー・プレイムがCIA工作員だということを政府高官がメディアにリークしたとされる件での犯人探しの一環だ。あくまで取材源を守って収監された記者の職業意識はすごいもんだと尊敬するが、一方でプレーン・ディーラーみたいな自主規制の動きが出てきているのが気になる。

 ジュディス・ミラーといっしょに証拠の提出を求められていたタイム誌のマシュー・クーパーは、連邦大陪での証言直前に取材源から情報開示を許可され、収監を免れている。要するに2人の情報源は違う人だってことだ。11日発売のニューズウィークによると、クーパー記者の情報源はカール・ローブ次席補佐官(David Corn.comの情報)。ローブの名前は取材メモの中にあるらしいと既に伝えられているけど、それが確認されたってところか。 

 取材源の秘匿を理由に収監される例は2000年あたりから増えてきているように感じる。ヒューストンのバネッサ・レゲットなんて5カ月半も収監されてた。NBC系列WJARテレビのジム・タリカニ記者が6ヶ月の自宅拘禁を言い渡されたのは昨年の話。ウォーターゲート事件があれだけの鮮やかなスクープになったのは70年代だからで、今だったら多分司法につぶされているだろうな。
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2005年07月07日

ロンドンでテロ−日本と海外の報道に格差

 ロンドンで7日朝(日本時間夕方)、地下鉄駅とバスの同時爆破テロが起きた。ロンドンで働く友人にお見舞いメールを送ってから、日本時間午後8時現在に日本と欧米のニュースサイトをチェック、見出しを比べてみた。

 偶然なのか、日本と海外のメディアに大きな違いが出た。日本のメディアは勢いよく飛ばしている」(こんな事件が起きているのに不謹慎な表現だが)という感じだ。もちろん、すべてのサイトを同時にチェックしたわけじゃなく巡回には時間差がある。あくまで私が8時すぎに見た段階の話で、その後の更新は追っていない。

 日経新聞「90人以上死亡か」
 毎日新聞「死傷者90人以上か」(本文によるとロイターES時事の情報)
 朝日新聞「50人死亡の情報」
 共同通信「20人死亡か」
 サンケイ新聞「死傷者多数」(本文に「約20人が死亡」とあり)
 読売新聞「死傷者多数」(本文に警察関係者から聞いた話として「死者最大50人)
 
 一方、海外のメディアはどれも「2人死亡を確認」か死亡者数を出していないかどちらかだ。キワモノのイメージがある米ドラッジ・リポートもまだ通信社の報道を転電しているだけなのか、控えめな報道なのにはちとビックリした。

英BBC "Two die in London terror blasts" ロンドンの爆破テロで2人死亡
英Financial Times "Caused fatalities" 死者が出た
英Times "2 confirmed dead" 2人の死亡を確認
英Guardian "Two fatalities confirmed" 2人の死亡を確認
米New York Times "at least 2 killed" 少なくとも2人が死亡
米Washington Post "killing at least two2 少なくとも2人が死亡
米Drudge Report "killing at least two" 少なくとも2人が死亡 

 私だって死者は2人よりも増えるだろうなとは思うのだが、日本の報道は「聞いた話」とか「死亡か」と断定を避けて責任逃れをしながら数字を水増し、「このぐらいの爆破テロなら死者は確認しているよりも多くなるはずだ」という思い込みに予想を加味して書いているような印象だ。
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2005年06月28日

更新怠る東亜日報

 サイパンを訪れた天皇が韓国人の犠牲者を慰霊する「韓国平和記念塔」を訪問したというニュースは突然で意外だった。それだけ昨今の日韓関係に「配慮」しているってことなんだろう。

 はたして韓国ではどんな受け止め方なのかと思って韓国紙の日本語サイトを巡回したら、3紙3様、それぞれの個性が感じられた。22時現在で中央日報はトップページの一番上に「明仁天皇、サイパンの『韓国人慰霊塔』電撃訪問」と大きな扱い。まぁ好意的といってよさそうだ。

 私の探し方が悪いのかもしれないが、朝鮮日報にはこのニュースは見当たらなかった。目に付いたのは「A級戦犯は罪人ではない−日本で主張相次ぐ」って記事ぐらい。

 次いで東亜日報。トップページの扱いは上から3番目(写真ニュースを除く)に「日王、戦争責任に沈黙…追悼を前面に」という記事がある。開いてみると、朝6時すぎのニュースがそのまま残っていて、記事中には以下のような部分がある。
しかし、サイパンで強制労働に苦しんだり、戦乱に巻き込まれて死亡した韓国人犠牲者のための「サイパン韓国人慰霊碑」は訪問対象から除外され、「国内向けの行事」という限界を露呈した。韓国人慰霊碑は日本政府が自国の死亡者のために立てた戦没者碑から徒歩で5分のところにある。

このような日程から分かるように、日王の今度の慰霊巡礼は「日本王室(特に昭和日王)の戦争責任」に関して黙ったまま、戦没者追慕だけの形式を取っている。
 東亜日報のサイトをいつもウォッチしているわけじゃないので、記事を長時間差し替えないのがいつものことなのかどうか分からない。事実と異なる記事を載せていてもマズイって思わないのかな。これだけ長時間放ってあると意図的なんじゃないかと勘ぐってしまう。

【追記】東亜日報のサイトは29日になって「天皇、『4分だけこっそり追慕』」という記事に差し替えた。しかし、見出しからしてアレだな…。(6月29日)
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2005年06月27日

Drudge Reportはズルイ

warning クリントンとモニカのスキャンダルを暴いたことで知られるDruge Report(あえてリンクは張らない)のサイトを久しぶりに訪問したら、何やら警告ウィンドウが出てきた(画像をクリックすると大きくなります)。

 左側にヘルプ&サポート・センターの文字、右側には「緊急システム警告」で危機感をあおる。「あなたのPCに重大なエラーがある可能性も」と続き、PCのパフォーマンスを改善するために次のウィザードを使いなさい、と命令口調だ。

 最初は最新のウイルスにでも感染したかとうろたえた次の瞬間、一番下にすごく小さな字で「広告」と書いてあるのに気づいた。パソコンに慣れていなくて英語も苦手っていう人なら何事かってビックリしてNextに進んでしまうかもしれない。スパイウェアを仕込まれるぐらいで済むのか、もっとマズイことになるのか、どうなんだろう? ちょっと興味があったけど怖くてNextをクリックする気はしなかった。

 アダルトサイトなどには多いのかもしれないが、あたしゃこんな紛らわしい広告は初めて見た。こんな広告を入れるなんて、Drudge Reportはやっぱりキワモノだ。
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2005年06月25日

ワシントンポストの「殺人」

 朝方のニュース巡回で、ギョッとするようなワシントン・ポストのお詫びを見つけた(原文=無料登録していないと開けないかも)。

 最高裁のレンキスト長官が「引退」または「死亡」したという見出しと記事サマリーを「うっかり」ウェブサイトとRSSフィードで配信してしまったという。死亡したときの予定稿は既にしっかり準備できていますよ、というのがバレてしまったってわけ。レンキスト長官も80歳だし、昨年あたりから体調をくずしているとは報道されているけど…。

 アメリカを代表する高級紙がこんな失敗をしてくれると、素人ブロガーとしてはなんだか気が楽になる。

【追記】
レンキスト長官は2005年9月3日にバージニア州の自宅で亡くなった。
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2005年05月17日

Newsweekの醜態

 キューバのグアンタナモにある米軍基地で、収容しているイスラム教徒を動揺させて供述を促そうとコーランをトイレに流していたという報道を米ニューズウィーク誌が撤回した。内容が正確ではなかった可能性があると編集者が声明を出してからわずか1日だ。(原文はこちら。記事撤回の部分は下部に追記されている)

 この話どうもよく分からない。そもそも最初にコーランの話が伝えられたのは5月9日号だから2週間も前のこと。発売は2日のはずだ。もし事実と違っていたら、その時点でペンタゴンはクレームをつけてもいいはずだし、それをしていないというのは広報担当者の職務怠慢。ペンタゴンが騒ぎ出したのは、アフガニスタンやパキスタンで暴動が起きて死者まで出た後の13日になってからだ。

 上でリンクを張った編集者の声明によると、コーランをトイレに流したという話の情報源は米政府当局者。ペンタゴンの2人の当局者に情報を確認したところ、1人はノーコメントで反応なし、もう1人は記事の別の部分に異議を唱えたが、コーランの部分については何も言わなかったという。もし、本当にコーランを冒涜していなかったら、きっぱりと否定するもんだと思うが。あるいは「知らない」と言うのが普通じゃないだろうか。コーランがこれほど問題になるとは思っていなかったんだろう。認識が甘かったね。

 編集長はこう書いている。「われわれの当初の情報源はあとになってから、コーラン事件の部分はわれわれが(記事で)触れた文書に書かれていたのかどうかはっきりしなくなったと言い出し、別の調査報告書か草案で読んだ可能性があるもあると言っている」。要するに、情報源の政府当局者はコーラン事件がなかったとは言っていない。その事件が記載された文書がニューズウィーク記者に話したのと違っていたかもしれないと言っているだけだ。

 これを読むと、実際にはコーラン事件はあったのではないかという気がしてくる。BBCがまとめたイスラム世界のメディアの反応でも、アフガニスタンのCheraghは「一部のアナリストはニューズウィークの報道は正しく、情報源は政府の圧力に屈したとみている」としている。当然の反応だ。

 記事を撤回しておわびしたのは、アフガニスタンで死者が少なくとも15人に上るなど、予想外の反米暴動が起きたからに違いない。しかし、もし報道の内容に自信があるのだったら、アメリカのイメージが悪くなろうとも、暴動で死人が出ようとも、絶対に撤回しちゃいけなかった。予想外に大きなマイナスの反応があったからって撤回していたのでは、自分の立場がまずくなるとサクッとエントリーを削除してばっくれる個人のブログと変わらない。

 9日号の報道が間違っていたとしたら、死者を出す結果になった誤報の罪は大きい。でも、死者が出た暴動にビビッて記事を撤回して騒ぎを収束させようとしているのなら、ジャーナリズムとしては既に終わっている。どっちに転んでもニューズウィークは救われない。
 
posted by らくだ at 23:41 | 東京 ☀ | Comment(4) | TrackBack(2) | メディア | 更新情報をチェックする