一連の事件の当事者が書いているだけに、決して報道されることのない外務省内の権力争いやら外交の実際など、興味深いことが次から次に出てくる。いかに国益を最優先して動いていたかが繰り返し述べられるのは、やや「いい格好しい」という感じがしないでもない。取り調べのかけ引きを通じて担当検事と個人的な信頼関係を築いていく過程は、まるで映画かTVの人間ドラマのようでもあった。
佐藤氏は、小泉政権の誕生前後で日本の根本的な方針が大きく変わったと指摘。その変化の1つとして次のように書いている。
田中女史が国民の潜在意識に働きかけ、国民の大多数が「何かに対して怒っている状態」がつづくようになった。怒りの対象は100パーセント悪く、それを攻撃する世論は100%正しい二項図式が確立した。あるときは怒りの対象が鈴木宗男氏であり、あるときは「軟弱な」対露外交、対北朝鮮外交である。このような状況で、日本人の排外主義的ナショナリズムが急速に強まった。小泉政権の誕生やマキコせんせがキッカケになったかどうかはともかく、『多くの人が何かに怒っている状態』とか『自分と異なる意見はすべて間違いと見なし攻撃する』傾向というのは、漠然とながら私も感じていたので興味深い。佐藤氏の指摘する通り、日本は「危険なナショナリズム・スパイラル」に入りつつあるのだろうか?
宮台真司さんなんかに言わせると、日本の「仲良し教育」がダメってことになるのでしょうか。みんな一緒。みんな横並び。仲間以外は「風景」であるとしか認識できず、血が通った人間であると認識できないと。
わたしもそこまでは言いませんが、でも、排外主義的ナショナリズム?もっとひどいような気が・・・。そんなに愛国心、持っているでしょうか。
「愛国心」までの感情は持っていないにしても、報じられる中国や韓国での反日行動の様子を見て快く思う日本人は多くないはず。
それが度重なると不快感につながり、反中国、反韓国の感情が強まらないとも限りません。
韓国での反日に関する報道を見るたび、韓流とかでやたら騒いでいる日本人って、いったい何なのだろうかと思ったり、また、そう思う自分は、ひょっとしたらマスコミにマインド・コントロールされているのではないかと思ったり。
ちょっと話が飛んでしまいましたね。
ただ、世の中が嫌な方向に動きつつあるのかな、と私も感じていたので、らくださんのこの書評は面白く読ませていただきました。
読む前は「なんだか難しそうだ。読み切れないかもしれない」と思ってたんですが、読み出したらイッキでした。
政治に興味ない私がこれだけ面白く読めるんだから、やっぱりすごい本なんでしょうねぇ。私にこの本を薦めてくれた知人は、「これだけの本なのに、新聞が全然書評に取り上げないのはオカシイ」と怒ってました。
先日知人との間では「人々の沸点が下がっているのでは」というような表現で話題になりました。最初に感じたのはイラクの人質事件の時でしょうか。「2種類の怒りに戸惑い」というエントリーに書いています。http://rakudaj.seesaa.net/article/109858.htmlあるいはもっと前から漠然と感じていたのかもしれません。
この本が新聞の書評で全然取り上げられていないとは知りませんでした。誰かの日記で「マスコミはあれだけバッシングしたのに、本が出ると掌を返したように褒めちぎっている」というような文を読んだので、あちこちで好意的に取り上げられているのだと思い込んでいました。書評でまともに取り上げるのはプライドが許さないのだとしたら、発想が貧しいですね。
私は新刊本をそれほど読みませんが、この本は自分にとっての今年のベスト5に間違いなく入ると思います。
さて、「書評 国家の罠」で検索しました。4月17日に読売・朝日が、毎日は6月7日(対談)、日経は6月5日のようです。紙面はあたっておりません。
新聞・雑誌の書評の網羅的に見ているわけではなく、書評の一覧できるサイトを知らないのですが。
調べていただき、どうもありがとうございます。大手紙でそれだけ出ていたら、こぐさんの知人も安心できそうですね。よかった。
自分がいいと思ったものが認められているような気がして、私もホッとしました。