そのうち「チョコを持って帰らないと娘に笑われる」とか、「義理チョコすらもう10年以上もらっていない」といういう人が2月になると私の周りに現れるようになってきた。男性が圧倒的に多い職場だったからムリもないかもしれない。名前も顔も知らない他部署の人に「チョコ頼んだよ」って言われることもあったっけ。
そういう人たちが可哀想で、頼まれるとイヤとはいえず、数百円の安いチョコを買っては配っていた。「義理チョコ」というよりも「同情チョコ」だ。その評判が伝わるから、次の年はさらに欲しいって人が増えるわけ。上司・先輩・同僚・後輩を問わずに配り、毎年の義理チョコ費は1〜2万円に上った。
全体的な傾向としては「皆さんで食べてください」と5人に1500円のチョコを送るよりも、300円のチョコを5人それぞれに配った方が評判がいい。300円のチョコだって、40人に配れば1万2000円だ。それでもご飯をご馳走になったりしていたから、収支は大幅黒字だったかもしれない。
義理チョコをキッパリやめたのは阪神淡路大震災がきっかけだった。「今年は義理チョコを自粛し、震災の募金に充てます!」と宣言、アルバイトの学生さんに頼んで各部に伝言を回してもらった。
悲しそう顔をした人はいたけれど、もちろん誰からも文句は出なかった。それどころか「じゃ、自分もカンパするよ」とお金を出してくれた人がいて、自分の分と併せて4万円近くになった。そんな大金を寄付するのは初めてだった。
それ以来、義理チョコは1つも買ったことがない。インド洋大津波とかパキスタンの震災とかあるたび、義理チョコ分だと思い、わずかながら募金してきた。
ここにきて再び義理チョコでも送ろうかな、と思い始めたのは、各方面でお世話になったり、お騒がせしたりしている人があまりにも多いからだ。あと、最近何かに募金をしていないから、自分の中では義理チョコを送らない言い訳ができない、というのもあるかもしれない。
でも、いったん義理チョコを再開すると、また収集がつかなくなりそうで、う〜ん、どうしようと悩んでいる。