

ニューヨークタイムズのコラムニスト、トーマス・フリードマンの書いた表題の本(日本経済新聞社)を読んだ。技術屋さんの書いたWeb2.0関連の本は何冊か読んでだいだいの傾向は分かった。この本は外交畑の記者がとらえたweb2.0の世界を描いているというと語弊があるだろうか。彼のいう「フラット化」というのは広い意味でのweb2.0だと私には思えた。そう考えると新鮮なweb2.0本だった。
全体的にはアメリカ人に対する警告の書で、日本についてはブロードバンドが安価で普及していることや携帯技術の進展などを指摘して好意的なんだけど、果たして日本は安心していていいのか…という気にさせられる。
特徴的な部分として印象に残ったのは、「現在の中国では、ビル・ゲイツはブリトニー・スピアーズなみのスターなのだ。アメリカでは、ブリトニー・スピアーズのほうがスターだ。−−それがアメリカのかかえている問題なのだ」というのと「文化大革命は終わったと思う? とんでもない、始まったばかりだ。ただ、中国の今回の新文化大革命は−−フラットな世界のプラットホームのおかげで−−トップダウンではなく、ボトムアップで動かされている。そして、ツールは毛沢東主義者の「毛沢東語録」でじゃなく、アップルのちっぽけな銀色のiPodだ」という下り(ともに下巻)。
というと『本の内容はおおよそ検討がついた』と思う人は多いかもしれない。それでも、これまで知らなかった話が盛りだくさんで、私は楽しく読むことができた。たとえばヨルダンの小荷物配送会社アラメックスがエアボーンとの提携を一方的に切られても、自社ネットワークを立ち上げて営業を続けられた話はとても面白かった。
ただ、あまりにもあちこちに話が飛ぶせいか、全体的には同じフリードマンが書いた「レクサスとオリーブの木」を読んだときのような興奮は感じなかったな。それでもなお、お勧めの2冊ではある。