それでも不思議に思うのは、あの泣いていた人の記者会見を断片的に見た限り、彼は政治的圧力を直接受けた当事者ではなくて、すべて「…だと聞いた」のような伝聞調だったこと。説得力に欠けるような気がした。と思ったら、案の定、中川・安倍のご両人がきっぱり否定。泣き男の記者会見では、会見後にその場にいた記者連中から拍手が起きたという。サラリーマン記者の我が身を振り返り、会社にたてつく人間への尊敬を示したんだろうけど、そんなのんきに拍手なんてしている場合かね?
きのうは朝日新聞の取材を受けたという「NHK幹部」が記者会見していた。匿名を条件に取材に応じておきながら、記者会見という表舞台に出てくるというのは、聞いたことがない。でも、これで朝日新聞は取材源を秘匿する義務がなくなったわけで、この松尾氏に関する部分の取材テープやメモを公表すべきだ。取材した側とされた側が同じ場に出てきて証拠を付き合わせれば、問題はすぐに解決するはず。
今の段階では朝日新聞が不利に思える。それにしては強気なんだよな。このままとことんまでやってもらいたいもんだ。
NHKの松尾氏は、朝日の取材について「まず結論ありき」と言っていたが、マスコミの取材なんて大方そんなものじゃないのかなぁ。まっさらな状態で一から取材を始めるなんて聞いたことない。「結論」というと強い言葉だけど、「先入観」は少なくとも誰も持っているように感じる。
たとえば、「AがB状態になっているのはCが悪いから」という仮定に基づいて取材をしたときに「Dが悪い」という情報を入手しても切り捨て、「Cが悪い」といった人のコメントだけ使う、みたいやり方はすごく一般的だ。
それでも「まず結論ありき」という取材もある。2000年の春に地下鉄日比谷線で死傷事故があったとき雑誌アエラ(これも朝日系だよ!)の記者から夫に取材の電話がかかってきた。どうもこの人は『線路がカーブしていたのが問題』と思い込んでいて、何回もそう尋ねてきたという。「そんなことはありません」と夫はそのたびに否定したものの、後日掲載誌が送られてきたら、地下鉄線路のカーブがいけないという話が夫の談話として載っていたそうだ。そのままクレームをつけずに放っておいたという。私だったら嫌味のメールぐらい送ったうえに、ここで不満をぶちまけてやるんだけど。