この本を読み、3月に私が会った陳さんと春子ばあちゃん(2010年3月10日付の「2人の陳さん」を参照)が私に対して遠慮して言わなかったことがあるのを感じた。一つは日本統治下の台湾では台湾人と日本人の間には歴然とした差別があったこと、もう一つは「台湾は日本に捨てられた」という思いだ。
それでも、この本に登場する人たちはこぞって日本を愛してくれている。「男に生まれていたら特攻隊に志願して天皇陛下万歳といって死んでいった」なんて話す人は、たとえ建前だとしても日本では1人も会ったことはない。そんなことを言う人が台湾に存在するっていうことがすごくないですか?
原住民パイワン族の方が2008年7月に亡くなった際、最後に発した言葉は日本語だったので家族は誰も理解できなかったという人物紹介が涙を誘った。登場するのはみな日本人以上に日本人の人たちだ。
彼らがつらい目にあったのは戦中よりもむしろ戦後かもしれない。親日派として密告されれば連行されて拷問に遭った。身内が殺された人も何人か登場する。台湾で38年間も続いた戒厳令が解除されたのは1987年だから台湾の人々が自由に物を言えるようになってからまだ20年余り。ようやく口を開けるようになった「元日本人」たちに残されている時間は長くはない。この本の登場人物も何人か亡くなっている。
この本を読んでいるうち、台湾の春子ばあちゃんからまたサンゴのネックレスが何本も送られてきた。私が唱歌と戦時歌謡のCDを送ったお礼だという。この分でいくと私はそのうち店が開けるほどのサンゴ持ちになりそうだ。秋には再び台湾に行く予定で、春子ばあちゃんには絶対に会いに行くつもり。
ばあちゃんも楽しみにしていて手紙には「今度会ったらまた日本の歌を歌ってあげます」と書いてあった。軍歌かな〜。でも、ばあちゃんの歌う軍歌なら素直に聞けるんだ。これが不思議。日本で軍歌を聞かされたらドン引きするに違いないのに。
「台湾人生」の映画版も見たいのだが、6月2日の上映は平日の昼間だし5000円もかかるのだったらDVDを買ってみた方がいいか。6月20日の西東京市での上映に行ければいいのだが。
【参考】映画「台湾人生」の公式サイト(予告編があるので音が出ます)
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最近近所の、めったに本も読まないような普通のおばさんに聞いた話を思い出しました。その方は台湾旅行をされて、その話をうかがった時の事です。ある台湾の現地のおばあさんがこういわれたそうです。
「沖縄が日本に返還された時、台湾も日本に返還されると当然に思っていたのに、結局台湾は日本に戻らなかった。何故台湾を戻してくれなかったのか。なぜ台湾を見捨てたのか。それだけが一生の残念無念だ。と日本に帰って伝えて欲しい」と。
この記事を見て、この話を伝えなければと、初めて思いました。