JR東日本のツーデーパスを利用して、珍しく真冬に寒いところへ出かけてきた。ツーデーパスは連続2日で5500円と18きっぷよりも高い上に利用範囲も限られているが、JR以外の路線にも乗れるのが魅力(しかし500円値上げされていた)。今回は会津鉄道に乗ってきた。写真は会津鉄道の芦ノ牧温泉駅。
芦ノ牧温泉駅で有名なのはネコの名誉駅長バス。芦ノ牧温泉にネコ駅長がいることは知っていたものの、名前までは知らなかった。しかし、その人気ぶりたるや私の想像を絶するものがあった。
芦ノ牧温泉で列車を降りると、反対側のホームを女性が歩いていて、丸々と太ったメタボ気味の猫が後ろを歩いている。思わず「あ、あれが駅長だ!」と声を出して夫に苦笑されてしまった。
女性が何やらネコに話しかけると、駅長は黄色いベンチに飛び上がってちょこんと座った。女性の言うことが分かるらしい。そして女性が駅舎のドアを開けて「はい、どうぞ〜」と中に声をかけると、7、8人がわらわらとホームに現れた。全員がデジカメや携帯を手にしていて、ネコ駅長の周りを取り囲んで写真を撮り始めた。私たちもそれに加わって写真を撮る。
この7、8人の人たちは写真を撮り終わると満足そうにどこかに去って行った。わざわざネコ駅長の写真を撮るためにやってきて入場券を買ってホームに入ったらしい。
芦ノ牧温泉駅に行ったのはネコ駅長のバスに会うためではない。芦ノ牧温泉までタクシーで往復して日帰り入浴しようと思っていた。しかし、片道1500円かかると聞いてすっかり行く気をなくし、次の列車が来るまで駅舎で1時間ほど時間をつぶすことになった。
撮影タイムが終わると駅長は駅事務所に入って窓際に陣取って座っていたが、しばらくすると再び先ほどの女性のあとについて出てきた。駅待合室の中に駅長専用のスペース(ネコ型のクッションなどが置いてある)があり、そこで寝るようにと女性が促すとおとなしくそれに従っている。しかも駅長の帽子をずっと被ったままなのがすごい。
普通のネコなら嫌がって振り落としそうなもんだけど。女性に「駅長はずっと帽子を被っているんですか?」と尋ねたら、「はい、8時半から4時半は勤務時間ですから」とのこと。そのプロ意識?に感心した。
しばらくして、どこかの温泉宿からの送迎車が到着、10人ほどの観光客がやってきた。待合室で寝ている駅長を見て、みんな携帯やデジカメを取り出した。しかし、この人たちときたらマナーは最悪だった。
あちこちに「フラッシュ厳禁!」と書いてあるのにフラッシュを使う人はいるし、思うようなアングルで写真が撮れないのか寝ている駅長の顔を無理やりグイッと動かす人はいるし、自分の子供2人と駅長を一緒に撮ろうとする母親が子供に「もっと近づいて」と言うと子供が「怖い〜」と言って騒ぐし、一気に阿鼻叫喚の場になった。
駅長は人間たちの傍若無人ぶりをしばらく我慢していたが、人波をスルッとくぐりぬけて事務所に入って行った。母親は子供に向かって「あんたがノロノロするから…」と責めていたが、そもそもあんなにおとなしいネコを怖がっているというのに、一緒に写真に撮ろうってのが間違っているとしか思えない。
ネコの駅長と聞いて『ふ〜ん、和歌山でタマ駅長が人気だからって二匹目のドジョウならぬネコかぁ』と冷ややかだった私だが、実際のネコ駅長は群がってくる私たち人間たちよりもずっと我慢強い上に思慮深そうに見え、人間の方がよほどオツムが足りなく見えた。これじゃネコが駅長になるのも納得だ。
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