2010年02月06日

「海角七号 君想う、国境の南」

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 幅広い世代から支持されて台湾映画史上最大のヒットを記録したという「海角七号 君想う、国境の南」を見てきた。タイトルは「うみかど」ではなく「かいかく」と読む。いきなり日本語のナレーションで始まるという不思議な映画だ。

 というのも、この映画は戦時中に台湾に赴任した日本人教師と現地の教え子の実らなかった恋愛と、台湾男性と日本女性の現在進行中の恋物語が絡み合って描かれる映画だから。台湾人の目を通してみる日台関係と言えば大げさかもしれないが、「台湾人にとっての日本人」がどのような存在なのかを考えさせられる映画だった。

 登場人物は脇役も含めてみなどこかに傷を持っている。例えば主人公の男性は音楽での成功、女性はモデルとしての成功を諦めるしかない現実をかみしめている。そして皆、傷を負っているからこそ優しい。悪役は誰も出てこない。

 ふと考えてみると、台湾が植民地支配を受けて深い傷を負ったのはいうまでもないが、支配者だった日本も敗戦国となり結果としては傷を負ったといえるのかもしれない。映画の背景にそんな解釈があるように感じられた。台湾でこの映画が作られて、しかも空前のヒットを記録したということは素直に嬉しい。一方でこのような映画が中国や韓国で制作されることは絶対にないだろう。台湾て本当に不思議な国だ。

 映画としては各登場人物の設定がうまくできているのに感心した。もう少し深く描いてほしい部分もあったけれど、全体的によくできた佳作。ただ、万人に推薦できるかっていうと疑問で、台湾に興味のない人が見て楽しめるかどうかは微妙なところだ。東京・銀座での上映は2月19日まで。各地で上映される予定があるので、関心のある方は映画の公式サイト(音が出ます)をご覧ください。

 見ていて思い出したのは、2007年6月の台湾訪問で会ったおばあちゃんのことだ。おばあちゃんは貧しい家庭に生まれて学校に行くのを諦めていた。日本軍が来て学校を造った上に子供は学校に行けと命令を出したので2年間だけ学校に行くことができ、彼女のお母さんは日本の兵隊さんが来るとたくさんご飯を食べさせたのだと、嬉しそうに話してくれた(詳細は2007年6月17日付の「台北のおばあちゃん」を参照)。あのおばあちゃんは今でも元気で温泉に通っているのだろうか。
     
タグ:台湾 映画
posted by らくだ at 18:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 書評・芸能など | 更新情報をチェックする
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