2004年04月22日

イラクからメールが来た

 イラク人質事件のことはもう書かないつもりでいた。だって、感情的な非難や乱暴な憶測に基づいているとしか思えない批判などが多くて、いつまでたっても前向きな話が出てこないんだもの。

 16日のエントリー「2種類の怒りに戸惑い」を書いた時点では、3人の人質について世間は「大変な目に遭ったけど自己責任だからしょうがないよね」という話で落ち着いて、自衛隊をイラクから撤退させるべきかどうかの議論に移っていくのだと思っていた。それが私の考える「自己責任」だったわけ。ところがいまじゃ自己責任ていう言葉が一人歩きしちゃって、今年の流行語大賞になりそうな勢いだ。自己責任の大合唱の陰でニヤリとしているのは誰なんだろう?

 さて、イラク人質事件について再び書く気になったのは、イラクからメールが来たから。内容を一部紹介することについては「名前、居住地、英語の原文メールを一切公開しない」という条件で快諾いただいた。この人の宗教的背景や職業は知らない。パソコンが使えて英語のメールが書ける恵まれた立場の人ということは確か。文中では挨拶やイスラム教特有の表現なのか理解できない部分は省いた。カッコ内は筆者(らくだ)の説明。
 今回の(3人の)人質事件にはたいへんな憤りを覚えました。ただ、イスラム教徒やイラク人がすべて野蛮だとは思わないでください。武器を持たない人、特に女性に銃を向けて人質にするというのはイスラムの常識では考えられないことです。犯行グループは決して一般的なイラク人ではありません。ならず者たちです。厳しく処罰されるべきです。

 3人がイラクを助けるためにやってきたことは、報道で知りました。私たちは客人をもてなす文化があります。今回このような事件が起きたのは卑劣な犯罪者のせいですが、治安を守れなかったGC(イラク統治評議会)の責任も問われるはずです。3人にが責められる理由はありません。GCが機能していないならCPA(連合軍暫定当局)に問題があるのです。

 それでは私はアメリカの占領統治に反感を持っているかというと、そうでもありません。私はサダム政権下で仕事を奪われました。今は最悪の時期だけど、将来はきっとよくなるはずと期待しているのです。日本では「アメリカ人は死ね」と騒ぐイラク人の姿が毎日のように報道されているかもしれません。しかし、私の知る限りそういう人はごく限られています。私のように静かに平和を祈っているイラク人もたくさんいることは知っておいてください。

 アルジャジーラはご存知のことと思います。今回の人質事件をきっかけに日本でも広く知られたのかもしれません。私は(複数の)人質事件でアルジャジーラが犯行グループのプロパガンダを垂れ流した報道姿勢に激しい怒りを覚えました。

 さて、日本の自衛隊についてですが、私の生活には直接関係ありません。それに正直いってどんな活動をしているのか知らないのです。あなたは自衛隊を撤退させるべきだとお考えのようですが、私個人としてはイラクにとどまってほしいです。どうぞイラクを見捨てないで下さい。一連の人質事件のせいでイラクの復興再建が遅れてしまうのではないかと心配でなりません。

【関連バックナンバー】
helloとhellを間違えちゃった(4月18日)
2種類の怒りに戸惑い(4月16日) 
posted by らくだ at 23:24 | 東京 ☀ | Comment(3) | TrackBack(0) | 国際ニュース | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
はじめまして。とうごサンのところからトラックバックを辿ってお邪魔しました。
う〜ん、これが「一般的な」イラク人の意見なのでしょうか?変な表現で恐縮ですが「拍子抜け」するなぁ。
実際マスメディアを通して流れてくる映像や文章は、カメラマンや記者によって切り取られた「事実」でしょうからね。イラク人にも様々な立場があるだろうし。さらにいろんな角度からの情報を検証しての自分なりの「現実」が受け手の数だけ存在していて...
いやぁ、まとまりつかないままコメントしてしまってすみません。
Posted by kazz at 2004年04月23日 01:06
おおさすがらくださんですね。現地の事情は単純ではないんだなと思いました。この方は恐らく知識階級なんでしょうけど冷静な視点をお持ちですね。

(お断りしておきますが私は(多分らくださんとは違い)今度の戦争にも自衛隊の派遣にも賛成という考えなのでその点考慮していただければと思います)

読んでみて、戦争に反対だとか賛成だとか自衛隊云々という議論では忘れられがちな、イラク人が幸せになるにはどうするべきかということを考えさせられました。

私的には今の無政府状態で無駄な血が流れている状態が早く終わって欲しいのですが、アメリカ軍が仮に撤退しても却って各背景同士の血みどろの抗争が繰り広げられる様な気がしてなりません。だから早期に主権をイラク人にといっても1年では期間が短すぎるような気がするのです。じゃどうすればいいのかというとそれもなかなか思いつきません。とりあえず武装解除・武器回収を進めて雇用状態を好転させて民心の安定を図ること位でしょうか。これが分かれば誰も苦労しないですね。
Posted by mustafa at 2004年04月23日 01:50
 kazzさん、mustafaさん、コメントありがとうございます。

 kazzさんのいう「拍子抜けする」って感じ、私にはよく理解できます。この人の見方が一般的かどうかは、まったく分かりません。たとえばイラク人がたまたまある日本人に今回の人質事件についての意見を聞いたと思えばいいのではないでしょうか。

 メディアだったらこの手紙を自分たちの立場に都合よく編集するでしょう。前半だけ掲載すれば「日本人の人質は悪くない」っていう話に使えるし、後半を掲載すれば「アメリカに反対しているわけではない。自衛隊にもいてもらいたい。イラクを見捨てないで欲しい」という論調に使えるわけです。

 私はそんな情報操作をする必要はありません。自分と異なる意見でもイラク人の生の意見に触れることができたのはすごく貴重だと思い、内容をそっくりそのまま紹介してなるべく多くの人と共有することが大切だと判断しました。
Posted by らくだ at 2004年04月23日 23:13
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