
それじゃ、どこまでが許容範囲なのか。著者はそういう議論は不毛とみなして「伝えたいことがあれば、 そのために考えられるありとあらゆる最善の方法を考える、というのが作り手の原点」だと言い切る。う〜ん、そうだとしたら、 ドキュメンタリーはジャーナリズムではなくて芸術なのかもしれない。「感動を与えたり受けたりするためには、お互い少々の悪事、 不正に目をつぶるという作り手と見る側の共犯関係が存在するのも厳然たる事実」と言われてもねぇ。 勝手に共犯者にしないでくれと言いたくもなる。
また、著者は「やらせ」はバレナイと断言する。NHKのムスタンでやらせが発覚したのは、 不満を抱いた現地スタッフが朝日新聞の記者にちくったからだ。
全体的なテーマを一言でまとめると、「事実の意味が正しく伝われば、それがどのように記録されたかは問題ではない」ということ。書名の 「テレビの嘘を見破る」と内容がチグハグに感じた。このようなタイトルをつければ書店で目を引いて売れるだとうという安易な (編集者や営業サイトの)発想だとしたら、ちょっと酷すぎる。