「このブルマというのは地方の名前ですか?」日和見な私は、現地でビルマと言ったり書いたりした人には住所の末尾に国名をBurma(Myanmar)と書き、ミャンマーと言った人には単にMyanmarと書いていた。
「いいえ、ミャンマーは昔ビルマっていってたので、英語表記でビルマって書いたんですけど」
「カッコの中にミャンマーって書いてあるから大丈夫ですよね」こんな検閲があるとは思わなかった。軍事政権はそこまで「ミャンマー」にこだわっていたか。郵便局のお兄さんのアドバイスにしたがって、Burmaの部分を黒く塗りつぶした。ちきしょ〜。情けない気分で敗北感を味わった。もともとビルマに届いたあとで内容を検閲される可能性はあると思い、政治的なことは一切書かなかった。手紙の中でビルマという言葉を何回も使っているから、検閲に引っかかって届かないかもしれない。
「これまではちゃんと届きました?」
「さぁ、ミャンマーになってから出すのは初めてなもんで」
「実は3年ほど前、ミャンマーあての郵便物にはビルマと表記しないよう向こうの政府から強い要望がありまして、確実に届くためにもなるべくビルマと書かないでいただきたいんです」
「……」
ちょっと甘かったな。ビルマかミャンマーかという問題、実はたいした違いはないのだそう。ミャンマーが文語、ビルマが口語とされている。日本語ペラペラのあるビルマ人は「本来だったら、日本と書いてニッポンと読むかニホンと読むかみたいな話」と説明してくれた。ところが、実際にはミャンマーというかビルマというかは軍事政権を支持するか否かの「絵踏み」になっている。私が自由にビルマと書けるのは、この狭いブログの世界だけみたいだ。
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現地の人々は、はやり「ビルマ」と言っていたそうですが、友人が政府関係の・・・と知るやいやな、皆、「ミャンマー」と改めたそうです。
その時、ドライバーをしてくれた人に「ビルマ」でいいよと言っても、しばらくは頑なに「ミャンマー」と言い続けたそうです。私の友人は気さくで面白い人。日が経ち、ドライバーとある程度、打ち解けたら「ビルマ」と言うようになり、少しだけ背景の話になったそうです。
その話を聞いて、へーーーーと思いました。
インドの「カルカッタ」を「コルカタ」というのは分かるんです。現地ではみんな「コルカタ」といっていますから。でも、ミャンマーについては全然国民の支持が得られていない。海外でのほうがより一般的な固有名詞だと感じました。
ビルマ国民の不満はうっ積しています。「日本は民主主義の国なのに、なんで軍事政権を支援するのか」と尋ねられたりしました。ボロボロになったアウンサン・スーチーの写真を見せてくれた人も。よほど反体制的な人間に見えるんでしょうか? いろいろ考えさせられた旅でした。
「ビルマかミャンマーか」をトラックバツクさせていただきます。よろしく。ビルマ政府から十年にわたって入国拒否されている菅原秀より。
コメントとトラックバックをありがとうございます。10年間も入国拒否ですか。
私は21年ぶりの訪問で、駅前に「サクラタワー」なる高層ビルができていたりしてビックリでした。でも、一歩ラングーンを出た農村地帯の生活ってほとんど変わっていないんですよね。電気もなく竹を編んだ小屋が崩れかかっていたりする。「おいおい、サクラタワー造る前にやることあんだろ。それに、ネーミングからいってジャパンマネーでできたビルだってもろばれじゃん」と心の中で毒づいていました。
最近は長いものに巻かれろ式に「ミャンマー」を使っていたのですが、現地でビルマ人に触れると言えなくなっちゃいます。一部が黒く塗りつぶされた封筒が無事に届いて私の思いが伝わるといいのですが。