2005年12月18日

NYTが政府の圧力で報道を自己規制

 ブッシュ米大統領が2002年、国家安全保障局(NSA)に対して令状なしで個人の電話を盗聴したりメールをチェックしたりする権限を与えていたことが16日付のニューヨークタイムズで明らかになり、その後大統領本人がそれを認めたことで、アメリカは大騒ぎになっている。私がその事実以上にびっくりしたのは、ニューヨークタイムズが1年前からその事実を知っていながら、政府当局者の要望を聞き入れて報道を見送っていたことだ。

 16日付のニューヨークタイムズ(無料登録していないと開けないかも)は、9段落目が次のようになっている。
The White House asked The New York Times not to publish this article, arguing that it could jeopardize continuing investigations and alert would-be terrorists that they might be under scrutiny. After meeting with senior administration officials to hear their concerns, the newspaper delayed publication for a year to conduct additional reporting. Some information that administration officials argued could be useful to terrorists has been omitted.
 簡単に訳すと、「米政府は、(9・11テロ関連で)進行している捜査を阻害し潜在的なテロリストに警告を与えることにもなるとして、この記事を掲載しないようニューヨーク・タイムズに要請した。当紙は複数の米政府高官と会って彼らの懸念を聞き、追加取材をするために1年間掲載を遅らせた。テロリストにとって有益な情報になりえると当局者が主張した情報は省略した」ってところだ。

「戦時中」ゆえの「自己規制」「自己検閲」ってことだろうか。そんなことは昔からどこの国でもあり、そのたびにメディアは権力に屈したことを反省してきたんじゃなかったのか…。それに令状なしに電話での会話を盗聴したり、メールをチェックするっていうのは憲法違反じゃないんだろうか? 政府の圧力に屈してしてしまったニューヨーク・タイムズには幻滅した。

 米Editor & Publisherによると、ニューヨーク・タイムズが情報を入手したのは、1年前といっても米大統領選の前らしい。もし、これが大統領選の前に明らかになっていれば、そしてハリケーン・カトリーナが今年じゃなくて去年米南部に上陸していたら、なんていっても空しいだけか…。
posted by らくだ at 19:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | メディア | 更新情報をチェックする
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