2004年11月11日

ビルマで涙の再会

 今回のビルマ旅行、私には温泉以上に大切な使命があった。お礼参りだ(あ、復讐じゃなくて、本当の感謝のことね)。簡単に書くと、約20年前に初めてビルマに行った私はタンテーという町で犬に足を噛まれ、現地のお医者さんに治療してもらった。彼は「遠くから来た旅人がこんな目に遭ったのだから」と治療費の受け取りを拒否。動転していた私は住所はもちろん名前すら聞かずに帰ってきたため、お礼状の1通すら送れなかったのだ。

 覚えているのはタンテーという町だったということと、お医者さんの家がバス(というか乗り合いトラック)乗り場の近くだったということだけ。だから、現地に行って目指すお医者さんを探し出すのには苦労した。そして、ようやく探し当てたと思ったらお医者さん自身は96年に亡くなっていた。でも、助手をしていた奥さんが私のことを覚えていてくれ、涙の再会を果たせた。そりゃまぁびっくりしてた。20年以上もなんの音沙汰もなく、急に訪ねたんだから。でも、すご〜く喜んでくれた。それ以上に、世話になったことを私がずっと忘れないでいたことに驚いていたようだった。

 おみやげとしてソニーのラジオ(ビックカメラで買った安いやつ)と来年の浮世絵カレンダーを持参していたんだけど、お医者さんの家には我が家にもないDVDプレーヤーがあり、恥ずかしくなっちゃってカレンダーだけ渡してきた。トホホ…。もっとまともなお土産買って行けばよかったなぁ。しょうがないから家族の写真をたくさん撮り、日本から送る約束をして今回はちゃんと住所も聞いてきた。

 話は終わらない。それからビルマ国内を旅してラングーンに戻り、いよいよ明日は帰国という夕方、夫とラングーン川をフェリーで往復して夕日を見物することにした。帰りのフェリーに乗る船着場で写真を撮っていたら、若い男性が妙に改まった丁寧な英語で「ちょっとお話してもよろしいでしょうか?」と声をかけてきた。日本語でも習い始めた人かなぁ、物売りか何かだとウザイなぁと思いながら、いぶかしげに「何でしょう?」と聞き返したら、「あなたは数日前、タンテーに医者を探しに行きませんでしたか?」と言う。ひっくり返るほど驚いて口をパクパクしちゃった。

 おめでたい私は『あたしってなんでそんなに有名人なの?』とか真剣に思ったね。よく話を聞いてみたら、この人は亡くなったお医者さんの4人の子供のうちの1人(誰もあとを継いでいない)。私が先日会ったお医者さんの姪御さんと一緒にラングーンからタンテーに戻るところで、その姪御さんが私を見かけて「あれ、あの人はこの前訪ねて来た日本人だよ!」と教えたので、帰りのフェリーに乗り込もうとしている私を人ごみを掻き分けて追いかけてきたという。人口500万人とも600万人ともいわれるラングーンで、こんな偶然なめぐり合いもあるんだね。これも何かの縁だと感動した。

 彼によると私のことは一族の間で大ニュースとなっているとか。またお医者さんがなくなってから奥さんは元気をなくしてふさぎ込んでいたけど、私が訪ねていったことを本当に喜んでいたと感謝された。行ってよかったなぁ。
posted by らくだ at 20:44 | Comment(6) | TrackBack(0) | 旅日記ほか旅関連 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
らくださん
とても嬉しいお話しをありがとう♪
人間として一番大切なこと♪
お医者さんの奥さんに最高のプレゼントが出来てよかったですね♪
らくださん、大好きだよ♪
Posted by 聖婆 at 2004年11月11日 23:11
聖婆さん、どうもありがとうございます。

 お医者さんが亡くなったと聞いて「なんでもっと早く来なかったんだろう」と悔やんだのも事実です。ずいぶん若いころの白黒写真をみせてもらい、「あぁ、そうそう、この人だった」と写真をなでることしかできませんでした。

 それでも家族とこのような再会ができたのは嬉しかったです。行く前は楽観的に「お医者さんが引退するか亡くなっていても子供があとを継いでいるかもしれない」とか「田舎町の医者なんてそんなに多くないからすぐにみつかるだろう」と考えていたのに、実際には医者は何人もいて目指す家を見つけるのは予想以上に大変でした。

 これから家族ぐるみの付き合いができそうです。
Posted by らくだ at 2004年11月12日 17:21
らくださん、無事の帰国何よりです。
心温まる話しをありがとうございます。
こう世知辛い世の中だと、こういう話しが一番良いんですよね。

らくださんが海外で出くわしたアクシデントにいつも現地の温かい人達に助けてもらうのは、
きっと、らくださんの人柄にあるのでしょう。
これからも良い旅行を続けてください。
Posted by さとる at 2004年11月12日 20:47
 さとるさん、どうもありがとうございます。

 私は本当に世界のあちこちでいろんな人に面倒をみてもらっています。あまりにも頼りなくて危なっかしく見えるのかなぁなどと思っていますが、さとるさんのようにいって(書いて)いただくと嬉しいです。

 知らない国で言葉も満足に通じない人の真心に触れると「人間に生まれて良かったなぁ」としみじみ思います。旅はやめられそうにありません。
Posted by らくだ at 2004年11月12日 23:35
く〜っ(>_<)
こういう話,めちゃくちゃ弱いです。。。
目をウルウルしながら読みました。
20年たっても「お礼参り(本当のね・・・(^_^;)」ちゃんと忘れずにするらくださんもすばらしいしその奥さんも覚えていたのも素晴らしい!
本来なら自国でこういう体験や感動をしたいけれど今の日本ではなかなか難しいのがちょっと悲しいですね。。。
でも本当に人生でステキな「ブックマーク」ができてよかったですね(^o^)丿
Posted by imoko at 2004年11月13日 09:44
あぁ、imokoさん、
 BBSが見られないからこちらにいらしていただいたんでしょうか? ご迷惑をかけてどうもすみません。

 奥さんは「あなたはあの時スカートはいていたでしょう。午前中に来たわよね」と言ったので、間違いないと確信しました。

 あの時お医者さんにもらった薬のビン、いまだに宝物なんです。お守りとして家に飾ってあります。その話にも家族は驚いていました。
Posted by らくだ at 2004年11月13日 11:45
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