十津川村に行ってから1カ月もたっていない(写真はその時の十津川村役場裏の風景、川遊びをする人がごく小さく見える)。以前紹介したバス利用のキャンペーンを利用した。予約時に確認したのはキャンセル規定だ。「例えば台風などで行けなくてキャンセルする場合、キャンセル料はどうなるのですか?」と尋ねたところ、「台風が来たらバス自体が運休しますから、そもそも行けません。だからキャンセル料もありません」と言われた。村営の温泉も休業すると聞いた。
実際、近鉄の大和八木駅から十津川温泉郷の入り口である湯泉地温泉(十津川村役場)まで向かう道中、十津川村に入ってからの道はすごかった。道はクネクネしているし、対向車とすれちがうのが難しいほど狭い部分もある。トンネルを出てすぐ急カーブがあって対向車が急ブレーキをかけたこともあった。
大和八木から十津川村役場まで4時間弱、湯泉地温泉に寄るためいったん下車して十津川温泉までさらに30分、終点の新宮まで走り通すと7時間半かかる。ローカルバスの日本最長路線だ。運転手さんは途中3回の休憩を挟むとはいえ、1人で運転する。私が乗った際、往路は観光客が私を含め10人ほど乗っていたせいか、途中で観光案内のようなアナウンスまでしてくれた。
山に入ると道は常に川に沿っている。水がほとんどいつも目に入ってくる感じ。そして道と川の間に小さな集落がポツポツと点在している。それは私にとっては非日常的な美しい光景だった。法面の工事をしているところもあって自然災害の多い地域だということはうかがえた。
それにしても、こんな大災害が起きてしまうなんて夢にも思っていなかったのだが、道と集落と川はそれぞれすごく近くにあるのだから、危険と背中合わせとも言える(そして、そこに暮らす人がいるから私は温泉を訪ねられる)。
避難勧告や避難指示が出ていなかったと指摘されているけれど、仮に避難の呼びかけがあったとしても、安全なところに避難するのは難しかったと思う。記憶をたぐりよせても、安全そうな場所は思い浮かばない。
私が見たところ建物があるのは川や湖沼の近くだった。それじゃ車で安全な場所に避難しようといっても、道路だって川に近い。それにあの道を大雨の中で運転するのは大変だ。運転したところで北の五条方面に避難しようにも五条でも被害が発生したし、和歌山県側だって同様だ。
台風の東側で大雨が降るという予報が早くから出ていた。だから、もっと早い段階、1、2日の余裕をもって大規模に山を降りた遠くの町まで避難できればよかった。そんな避難システムを作るのは非現実的だろうか。十津川村の公式サイトはずっとアクセスできない。
【追記1】9月8日に再び十津川村の公式サイトにアクセスしてみたら、復活していた。8日付で「台風12号による村内の状況」もアップされていて、主要道路とライフラインの状況が分かる。
十津川村観光協会のサイトも7日付で更新され、「十津川村へ向かう国道168号線をはじめその他多くの道路が寸断されております。 十津川村民みんなが全力で復旧作業を行っています。 みなさまのご支援・ご協力のほどよろしくお願いいたします」となっている。温泉の状況については、産経新聞の記事「『源泉かけ流し』名湯の地、風評が心配 十津川村」が詳しい(ポインタにつれて動くアイコン?が邪魔臭いけれど…)。湯泉地温泉の4階建てのホテルの3階まで水が来たとは、私の予想をはるかに超えていた。(9月8日21時追記)
【追記2】9月13日に十津川村役場の公式サイト上に寄付金・義援金の振込先が掲載された。受付期間は明らかにされていない。(9月13日21時追記)
【追記3】復旧が進んで10月25日には十津川温泉の源泉ポンプが設置され、11月1日からわらびお公衆浴場(十津川温泉)、泉湯(湯泉地温泉)、滝の湯(湯泉地温泉)の3カ所の公衆浴場が11月1日に営業を再開する。11月いっぱい入浴無料。(10月28日追記)