お巡りさんの近くを走るのも落ち着かない。追い越して行ってもらおうと少しスピードを落としたら、その自転車も同じように速度を落とした。今度はちょっと速めてみる。同じように速度を上げてついてくる。内心穏やかじゃない。今日はこれまでのところ信号無視もしていないってのに、自覚しないまま何かマズイことをしているのだろうか?
だいたい他の自転車が信号無視をしてスイスイ追い越して行っても、このお巡りさんは注意もしない。どうみても私がターゲットとしか思えない。気味が悪い。こういうときに全速力で逃げたくなる人の気持ちが分かる。全速力で飛ばせばぶっちぎれる自信はある(なんて考えている自分が情けない…)が、それじゃ思い切り怪しいオバサンになってしまう。
何も心当たりがないだけにかえって不気味だ。警戒しながらもそのままこいでいたら、お巡りさんが速度を上げ隣に寄ってきて「もしもし」と声をかけてきた。キター! 何この緊張感。
「はいっ。何ですか?」かしこまって相手を見ると、お巡りさんは私の自転車の後輪を見ている。「後輪のタイヤ甘くないですか? 空気入れた方がいいですよ。重いでしょう」だって。なんだ、そんなことか〜。思い切り脱力した。つい「ケツ圧が高いものですから後輪は空気が抜けやすくて…どうもありがとうございます」なんて言ってしまって笑われた。
しかも、このお巡りさん、「この先を左側に入ったところにある自転車屋さんならタダで空気入れ貸してくれますよ」なんて教えてくれる、とてもいい人なのだ。「年末のパトロールですか? お疲れ様です」と言う私に、「いや、そうじゃないんだけど…、あれ、おたくの後輪ばっかり見ていたから、行こうと思っていた交番を通りすぎちゃった」とうろたえ、まわれ右して猛スピードで去って行った。業務そっちのけで心配してもらっちゃってどうもすみません。