2009年09月01日

生かさず殺さず

 選挙結果を受けて群馬県に建設される八ッ場ダムの問題がクローズアップされている。民主党のマニュフェスト通りに建設は中止されるんだろうか? 川原湯温泉に何回か足を運んでいる私にしては複雑な胸中だ。

 もともと大型公共事業には否定的な私、八ッ場ダムを建設する物理的な必要性はないという話をどこかで読んだこともあって、八ッ場ダム問題についてほとんど知らないなりに建設には反対の立場だった。住みなれた土地を追われる川原湯温泉の人たちも当然反対なんだろうと思っていた。

 ところが、現地でたまたま会って話をした高齢者の方はまったく違っていた。いわく「50年以上も前から建設計画が持ち上がっていて、自分自身だって反対運動にも参加した。しかし、それをすべて乗り越えた上でダムを建設して自分たちが移転することに合意したんだから、それがすべて。いまさら反対なんて言っているのは都会に住んでいる部外者だけ」と言われ、自分の単純思考を恥じた。

 その方は、覚悟ができたからには早く新天地での生活を始めたいのに、一向に計画が進まないことにいらだっていた。ポツリと漏れた「自分たちは何をしたわけでもないのに、何十年も生かさず殺さずの状態に置かれている」という言葉にギクリとした。

 川原湯温泉観光協会の公式サイトにも8月31日の項に「僕たちは、新しく街を造る事を国と約束しダム建設に泣く泣く合意した。それを、政党が変わったからと言っていきなり中止と言うのは許される事ではない」「58年間かけた『すごろく』でもう少しで上がる処まで来て振り出しになるなんて受け入れられない」という部分があり、ずっしりとした重みを感じる。

 何年も前に耳にした「生かさず殺さず」の期間が、民主党の勝利によってさらに長くなってしまうなんてあんまりだ。結局のところ、政権交代で翻弄され、一番の負担を強いられるのは弱者だ。
 
posted by らくだ at 22:41 | Comment(0) | TrackBack(2) | 国内政治 | 更新情報をチェックする