私は目的地に向かうのにその人ごみをかき分けて進まなくてはならず、かなり苦労したしすごく迷惑だった。とにかくすごい人。マイクを持った人が何かいうたびに歓声が上がる。みんな今回の選挙はこんなに関心があるんだ。それにしても平日の夕方だっていうのに足を止める人がこんなにいるとは。しかも熱心に歓声を送ったり拍手している人ばかり。やはり今回の選挙はこれまでと違うんだ、と感心した。
しかし、よくみると、観衆の中に手に持ったパンフレットを見ながら頷いている人が何人もいる。選挙運動の期間中はパンフレットやチラシの配布って禁止されていたのでは? ひょっとして、この人たちは自宅からパンフレットを持参したのだろうか? と思った次の瞬間、なんだ、この人たちはサクラか、と思い当った。だって、街頭演説を聞きながら揃ってパンフレットに目をやりウンウンなんて頷かないでしょ、普通。
確かに党の大物がやってくるのだったら、大勢動員しないと格好がつかない。これまで、これだけ人が集まった選挙演説に出くわしたことがなかったので、どれだけサクラが混じっているんだろうなんて、考えたこともなかった。本当のところどうなんだろう?
小一時間で所要を済ませて駅に戻ると、まだ演説をやっていた。ちょうど終わるところだったみたいで、「これで私の話は終わりにしますけれども…」と候補者が言ったところで、今までで一番大きな歓声が上がった。サクラと思われる皆さんも『早く終わらないかな』と思っていたんじゃないだろうか。