(レイキャビクの町)
アイスランドはこれまで行ったどの国とも違うとても不思議な国だった。
(レイキャビクの町)
例えば宿を探していたとき。「うちは満室だけどちょっと待ってね。他のところに電話して空室がないか聞いてあげるから」と言ってあちこち電話してくれる人が何人もいた。しかも、見つけてくれたところを「すみません、私たちにはちょっと予算オーバーで…」と断っても嫌な顔一つせず、「隣の町に行くとゲストハウスがあるよ」とニッコリ送り出してくれて恐縮した。
(レイキャビクの町)
ビジット・アイスランド・イヤーかなにかで『外国人観光客に親切にしましょう』というキャンペーンでもやっているのかと思って聞いてみたのだが、そんなこともなさそう。素でいい人たちなのだ。
ピュアな自然と人間に触れ、自分自身を浄化できたような気がした。このところこういう時にデトックス(detox)という言葉を使うことが多かったのだが、なぜか今回は浄化(purify)という言葉が頭に浮かんだ。
天気も不思議だった。お天気雨は何回も経験しているものの、それに台風以上の強風と霧だか靄が共存できるとは知らなかった。どれだけの強風かっていうと、前を走っているバスがズズズッと滑るように動いて行ってセンターラインを越えるくらい。見ていて怖かった。
それからアイスランドは人も店も予想以上に少なかった。北海道と四国を併せた程度の面積に人口は30万人強。レイキャビクに次ぐ第2の都市(というか町)アークレイリの人口は2万人にも満たない。
幹線道路を走っていても、店とかレストランなんてまずない。時折あるガソリンスタンドがコンビニと食堂を兼ねていて、昼ご飯はもっぱらガソリンスタンドの食堂で食べていた。
(東部セイジスフィヨルズルの町にあるガソリンスタンド併設の食堂)
確かに食材を買って何か作ろうにも、ガソリンスタンド併設のスーパーで見たキュウリ(日本のよりも太いやつ)が1本350円じゃ、とても買えない。アイスランド人の生活はどうなっているのだろう? 不思議でしょうがない。
1年前の金融危機で通貨クローナが暴落し、外国人にとって物価は安く感じられるのかな、と思っていたのだが、キュウリに限らず物価は高めだった。ガソリンが1リットル190クローナ(144円)前後、街中のレストランで食事をすると魚のメインディシュが2000−3000クローナ(1500−2300円)程度。そんなこともあって自炊は必須だった。
アイスランドという国自体が破たんの瀬戸際に追い詰められたと聞いていた割には、一介の旅行者にはそれを実感することはできなかった。強いていえばNYからレイキャビクに往復したアイスランド航空の機内食やイヤホン類が有料だったことくらいかな。
あと8月8日夜のレイキャビクは若者が街にたむろしていて妙な雰囲気だった。アイスランドで2番目に大きな祭のせいだということは後になって知った。その祭というのがゲイ・プライドで、この日は午後にパレードがあったらしい。ゲイじゃない人も繰り出していた様子だが、若者が一様に暗くてどんよりした目をしているように見えたのが気になった。
(レイキャビクの町。ゲイパレードの翌朝)