なんて懐かしい名前なんだろう。20年前も丸顔だったけれど、それにしても随分太って変わってしまったな。「あの人は今」というニュースなのかと思ったら、天安門事件から20年のこの時期に亡命先の台湾からマカオ経由で中国への入国を図ったと知り、体が震える思いだった。
私は20年前に香港に住んでいた。天安門広場での民主化運動の高まりを背景にジョルダーノ(ユニクロみたいな店)が民主化運動のリーダーの顔写真を入れたTシャツを売り出し、私はこのウアルカイシのTシャツを買った。王丹のは売り切れていて、ウアルカイシのLLサイズのTシャツだけ売れ残っていたのだ。ワンピースみたいな長さのTシャツを着て歩いていたっけ。こう書くとみっともなくて恥ずかしいと思うのだが、当時はそのTシャツを着ていることが誇らしかった。
過去20年で自分はいろいろと変わってしまった。仕事、住まい、友達、家族、変わっていないものはごくわずか。それなのに、この人は何一つ変わらず中国の民主化に人生を捧げている。天安門事件から20周年を機会に中国入りを目指すなんて、自らを犠牲にしたアピールとも思える。
ウアルカイシらはいち早く海外に逃れていたことで、天安門事件以降は「自分だけ逃げて学生を見殺しにした」などと容赦ない批判を浴びせられた。「私腹を肥やした」なんていう話もあったように記憶している。今になってみると、やはりリーダーというのは凡人とは違うのだと思う。自分だったらとっくに易きに流されている。
マカオでの入国は拒否されたとのこと。中国に入っていたらそのまま行方不明なんてことがあるかもしれず、彼の身を考えれば入国拒否にあったのはよかった。けれど、祖国に戻らせて家族に会せてあげたいし、天安門広場に行かせてあげたい。
5月に行った北京、なんとなく自分の肌に合わない感じがしたのは、去勢されちゃったというと表現が悪いかもしれないが、どことなくおとなしくて「中国人民のあふれるエネルギー」みたいなものが伝わってこなかったから。もう、20年前のようなパワーに満ちた民主化運動は起きないのだろうか?