彼から届いた手紙を読んだだけで文章から率直で真っ直ぐな人柄がヒシヒシと伝わってきて、絶対にいい人に違いないと思っていた。実際に会ってみたら初対面という気がしなかった。
話しているうち、父がネパールやパキスタンなど海外の山に出かけるきっかけを作ってくれた人であること、国内の山行に出かけて濃霧で道に迷ってあわや遭難という際に救助してくれた人であることが分かった。父にとっては命の恩人だった。
ありがたいことに実家でそのままになっている山岳関係の書籍コレクションやアイゼンなどの登山道具を全部引き取ってくれるという。私としても捨てたりブックオフに売ったりするのは抵抗があってどうしようかと途方に暮れていたところだった。こんな嬉しいことはない。
それだけじゃない。海外で旅した国も私たちはずいぶん共通していた。チュニジアやらボリビアのポトシの話で盛り上がり、さらに南米の話をしていたら、私の友人の家族が彼の友人だっていうことが分かった。お互いにすごく興奮した。
世の中では「六次の隔たり」ということがよくいわれる。友人の友人をたどっていくと平均で6人を介せば世界中の誰とでもつながれるっていうやつだ。この人とはなんと世界の裏側まで回りながら「二次の隔たり」でつながっていたわけで、父ルートだと「一次の隔たり」だ。初めて会った気がしないのも当然と納得した。だから人間て面白い。