◎調べる技術・書く技術=野村進(講談社現代新書)
とても価値ある740円。野村進の文章はスキがなく、内容がみっちりと詰まっている。材料を集めてモノを書くノウハウ本だが、文章を書くことへのこだわりを教えてもらった。新書は1回読んでそれっきりになることが多いのだが、この本は折にふれて何回も読み直すと思う。
○わかる! 使える! 広報活動のすべて=山見博康(PHPビジネス新書)
全体的によくまとまっている。広報担当者が読むにはものたりないが、一般的な社会人が「広報とは何か」を知るにはお勧めできる一冊。ただ、内容がちょっと古い気もした。というのは、「インターネットを駆使しよう」という項目があるのに、駆使の仕方についての記述に乏しい。著者がネットを駆使しているとはとても思えなかった。
○ジャーナリズム崩壊=上杉隆(幻冬舎新書)
帯を見ただけで内容はだいたい分かった。記者クラブ問題は私の知っている限り10年以上前から同じように取り上げられているので新鮮味はない。全面的なNYタイムズ礼賛もちょっと鼻につく。それでも読んで価値があると思ったのは、たとえネット上でもモノを書いて公表する責任について考えさせてくれたから。
×旅館再生=桐山秀樹(角川oneテーマ21)
期待が大きすぎたのか、不満が残った。ほぼ全編を通して著者は再生旅館と再生業者のスポークスマンになってしまっているように感じた。もう少し突き放した視点で書いてほしかった。
内容が1、2年前の古い話に感じられたっていうのもある。例えば、星野リゾートによる長野・浅間の「夜まつり長者」再生について、著者は「星野リゾートの再生事業のもう一つの特徴は一度コンセプトを決めたら、目に見える結果を出すまで実行するという『粘り強さ』だ」と書いているが、夜まつり長者は目に見える結果を出す前に伊東園グループ入りしている。この本の校正が出た時期には既に名称も新たにオープンしていたはず。
細かい部分では「債務を100%減資」という表現も気になった。減資で減らすのは資本金で、債務を100%減らすなら債務免除になるのではないだろうか。そのほか「山梨県小淵沢町」には「おぶちさわちょう」とルビがついている。のけぞったのは「皆生温泉」の読みだ。著者が「旅やホテルに関する著作多数」というのにルビは「かいけい」となっていた。これは著者よりも編集者を責めるべきなんだろうか? 角川書店て大手だと思っていたのに、こんな雑に作られた本を出して経営の屋台骨は揺るがないのか疑問だ。