スタート直後になんとなくヘンだと思ったのは走るフォームがどことなくマラソン向きじゃないような気がしたから。美しいけれど、もっとコンパクトにまとめないと、余計なエネルギーを使ってしまいそうな気がした。ラビット(ペースメーカー)はこのレースには出ていなかったようだ。彼女は前半は独走態勢で、明るい顔をして楽しそうに走っていた。
食事の片付けなどをして再びテレビを見ると、別人のようにストライドの狭くなって顔つきの変わった彼女がいた。それからほどなくしてズルズルと後続集団に抜かれ、最後は1キロ6分ペース。足がもつれて何回も転びながらゴール。オリンピックどころの騒ぎじゃなかった。
私が同じ状態になってゴールするよりも、彼女のほうが何倍もつらいはず。だって「最速のトラックランナー」なんだし、オリンピックを目指しているんだし、沿道で応援する人は彼女の顔を名前を知っている人が圧倒的に多いだろう。おまけに無様な自分の姿だけじゃなく親の泣き顔まで全国に中継されているのだから。
見ていてこっちがつらくなって泣けてきた。よく最後まで走ったもんだ。そこに彼女の非凡さを感じた。私は市民ランナーだから遅くても歩いても一向に気にならないが、彼女と同等の立場にいたら多分途中で棄権していたと思う。
救いはゴールしたあとの彼女が(少なくとも表向きは)割と明るくケロッとした顔をしていたこと。彼女のことだからこのままで終わるとは思えない。北京は今からトラックで目指すんだろうか。マラソンは別の機会にぜひ再チャレンジしてもらいたい。
きょうのレースを見ていて、ランナーの間に語り継がれている「走った距離は裏切らない」という格言を思い出した。そんな私は今朝は6キロ余りしか走っていません。