「名物にうまいものなし」という。これ、かなり正解だと思う。かつての私は、旅に出かけるときにいつもガイドブックを調べ「この名物料理を食べるぞ!」と鼻息荒く出かけて行っては現地でしょんぼりすることが多く、夫にはすっかりバカにされている。
名物には2つある。料理方法がその土地に特殊なものと、○○鶏、××牛みたいな食材だ。この食材の場合、味覚が鈍感なせいか「さすが○○鶏だけあっておいしい」なんて感じた記憶はサッパリない。スーパーで売っている輸入肉を出されても、たぶん絶対に気づかないだろう。
そんなわけで名物食材はあきらめ、もっぱら名物料理を試すようになった。それでも「ぜひもう一度食べたい」とうなるようなものって、そうそうない。だから、最近では口コミが頼り。島原の具雑煮はネット上の友人に教えてもらい、そのおいしさに唸った。今回も人に教えてもらったおかげでおいしいものにありつけた。

まず佐賀県・嬉野温泉の温泉湯豆腐。入浴させてもらった旅館の女将さんに「おいしいお店を教えてください」と頼んで新八寿司という店を教えてもらった。チラシかニギリがつくランチセットで980円。真っ白で写真映えしない。奥に小さく写っている真っ白なやつだ。
温泉で豆腐を煮るから、たんぱく質が分解されて角がなくなり、さらにフルフル状態になっている。ゴマだれがカツオの風味もきいていて絶妙の味わいだ。以前、温泉湯豆腐を自宅で作ったことがあるが、こんな豆乳鍋みたいになるまで煮なかった。今度温泉水を持ち帰ったら、あのたれの味を再現して作ってみよう。

別府・三つ葉グリルのとり天はネット上で数年前に教えてもらった。2年前に半日だけ別府に寄ったときは定休日で涙を飲み、今回行ってみたら店が閉まっていて張り紙があったので「すわ閉店か!」とあせったが、近くに引っ越して大きく明るくなっていた。定食(950円)のとり天は、確かにカリッと揚がっていて微妙に甘みのあるタレとよく合い、これまでに食べたとり天の中でもベストといえる味だった。