2005年09月03日

ペットとスクールバス

 アメリカはハリケーン「カトリーナ」に襲われた一大ショックの茫然自失状態から、第二段階に進んできたように感じる。いろんな人が「州や市当局の対応が悪い」「連邦政府が治水予算を削ったから堤防を強化できなかった」「州兵がイラクに派遣されたので救助活動がはかどらない」「被災者の大部分は黒人で、救助が進まないのは人種差別が背景にある」「カトリーナが来る数日前から避難を呼びかけていたのに、それに従わなかった人の自己責任」などといい始め、ありとあらゆる「非難の対象」探しが始まった。

 休暇を切り上げたブッシュ大統領がワシントンに戻りがてら上空から被災地を“視察”し、ワシントンで専用機から降りてきたときにペットの黒い犬(名前はバーニー)を抱えていたのにはビックリした。あれはイメージ戦略上はかなりマイナスだと思う。あれを見ただけで“視察”という言葉は私の頭の中では“高みの見物”に変身してしまった。一方、ニューオリンズのスーパードームからバスで再避難する人たちはペットの持ち込みを禁止された。ある少年は警官に犬を取り上げられ、吐くまで泣いたという(AP通信)。非常時なのだから仕方ないとは思う。でも、もしこの少年があの大統領の映像をみていたらどんな気がしただろう。

 Survey USAの世論調査によると、ブッシュ大統領のハリケーン対応への反応は以下の通り。

      8月30日  9月1日  9月2日
評価する   48%   46%   40%  
評価しない  39%   44%   53%

 わずか数日で「評価しない」が「評価する」を逆転してしている。回答者の人種別に2日の最新調査をみると、黒人の間で「評価しない」が71%、「評価する」が19%の一方、白人はそれぞれ49%と44%になっている。もともとアメリカ南部は黒人が多いと分かっちゃいるけど、被災者の映像をみていると圧倒的に黒人が多いから、この調査結果は納得がいく。

 ハリケーン関連で「あんたはエライ!」と思った人は、いってみれば犯罪者で、ジャボー・ギブソンという18歳の黒人青年だ。ニューオリンズでスクールバスを盗み、まったく面識のない約100人の被災者を乗せ、新たな避難場所に指定されたテキサス州ヒューストンのアストロドームに向かったのだ。7時間かかってアストロドームに一番乗りした彼らは、公式に仕立てられたバスじゃなかったせいか、最初は受け入れてもらえなかったという。中には生後8日の赤ちゃんもいたっていうのにね。お役所のやることはどこも大して変わらないみたいだ(News Channel 5)。

 生まれて初めてバスを運転したギブソンは、「人々を助けられたのだから、(バスを盗んだことで)責任を問われても構わない」と言っている。ニューオリンズにはこんなにたくさんスクールバスがあった(写真)のだから、こんなことになる前に車を持たない人たちをどこかに避難させることができればよかったんだけど、いまさらそんなことを言っても遅い。彼が罪を問われないことを祈る。 
posted by らくだ at 17:07 | Comment(2) | TrackBack(1) | 国際ニュース | 更新情報をチェックする