
遅ればせながら「通貨燃ゆ 円・元・ドル・ユーロの同時代史」
私が常日ごろ不満に思っているのは、例えばアジア通貨・金融危機などの際の報道の浅さ。要するに普段アジアにいる記者さんたちは金融のことなどほとんど知らず、長期債相場が上がれば金利が下がるなんてことには全く興味がない人が多い。どうもカネのことを考えるなんて政治や外交よりも一段劣るというように認識しているんじゃないかと思ってしまう。逆にマーケットの動きに通じたような記者は政治・外交の大局には関心がなさそうにみえる。複合的な考察というのがほとんどないのだ。
そういう意味ではこの本にはすごく満足できた。太平洋戦争前に通貨の信用をめぐる日本と中国(+米英)の争いがあったとか、戦争直後の日英の立場は「マネー敗戦」という点で似通っていていたとか、とても興味深く読み進んだ。
戦中からニクソンショックあたりは丁寧に書かれていて読み応えたっぷり。贅沢をいえば、最近のことというか、ユーロと元についてもうちょっと書き込んで欲しかった。次の作品に期待したいところ。