この話どうもよく分からない。そもそも最初にコーランの話が伝えられたのは5月9日号だから2週間も前のこと。発売は2日のはずだ。もし事実と違っていたら、その時点でペンタゴンはクレームをつけてもいいはずだし、それをしていないというのは広報担当者の職務怠慢。ペンタゴンが騒ぎ出したのは、アフガニスタンやパキスタンで暴動が起きて死者まで出た後の13日になってからだ。
上でリンクを張った編集者の声明によると、コーランをトイレに流したという話の情報源は米政府当局者。ペンタゴンの2人の当局者に情報を確認したところ、1人はノーコメントで反応なし、もう1人は記事の別の部分に異議を唱えたが、コーランの部分については何も言わなかったという。もし、本当にコーランを冒涜していなかったら、きっぱりと否定するもんだと思うが。あるいは「知らない」と言うのが普通じゃないだろうか。コーランがこれほど問題になるとは思っていなかったんだろう。認識が甘かったね。
編集長はこう書いている。「われわれの当初の情報源はあとになってから、コーラン事件の部分はわれわれが(記事で)触れた文書に書かれていたのかどうかはっきりしなくなったと言い出し、別の調査報告書か草案で読んだ可能性があるもあると言っている」。要するに、情報源の政府当局者はコーラン事件がなかったとは言っていない。その事件が記載された文書がニューズウィーク記者に話したのと違っていたかもしれないと言っているだけだ。
これを読むと、実際にはコーラン事件はあったのではないかという気がしてくる。BBCがまとめたイスラム世界のメディアの反応でも、アフガニスタンのCheraghは「一部のアナリストはニューズウィークの報道は正しく、情報源は政府の圧力に屈したとみている」としている。当然の反応だ。
記事を撤回しておわびしたのは、アフガニスタンで死者が少なくとも15人に上るなど、予想外の反米暴動が起きたからに違いない。しかし、もし報道の内容に自信があるのだったら、アメリカのイメージが悪くなろうとも、暴動で死人が出ようとも、絶対に撤回しちゃいけなかった。予想外に大きなマイナスの反応があったからって撤回していたのでは、自分の立場がまずくなるとサクッとエントリーを削除してばっくれる個人のブログと変わらない。
9日号の報道が間違っていたとしたら、死者を出す結果になった誤報の罪は大きい。でも、死者が出た暴動にビビッて記事を撤回して騒ぎを収束させようとしているのなら、ジャーナリズムとしては既に終わっている。どっちに転んでもニューズウィークは救われない。