キューバが11月8日以降、米ドルの流通を禁止する( 毎日新聞)。恐ろしく時代に逆行する政策だ。旅行者はドルを兌換ペソに交換しなくちゃならず、しかも手数料を1割徴収するんだとか。自分で自分の首を絞めることになりそうだ。
というのも、キューバは既にドル経済圏。ドルの流通が自由化されたおかげで、商店の店頭ではモノが増え、貧富の差は大きくなったとはいえ生活は豊かになった。2000年に行った時はベネトンショップができていたし、デパートでブランド品を(ニセモノかもしれないが)売っているのに驚いたもんだ。「ドルを手にいれれば豊かになれる」と知った一部の人々の勤労意欲も向上していた。実質的な資本主義経済は4年前の段階で既に後戻りできないところまで来ているように感じた。
これが兌換ペソ本位制になれば、経済状況も10年ぐらい逆戻りすることになりそう。95年に初めてキューバに行ったときは経済がようやく自由化されつつあった時代。デパートの店内は照明もまばらで薄暗く、ショーウインドーを覗き込むと幅1.5メートルぐらいあるケースの中にボルトとナットが3組あるだけ、なんてこともあった。もちろん店員はやる気なし。民宿は何軒かあったけどまだ非合法だった時代だ。
兌換ペソなんてキューバの外に出たら紙くずと同じ。キューバ人だって「トイレットペーパーにも使えない」とジョークを言っている。店頭の輸入品は大幅に減るに違いない。海外からの送金はユーロとカナダ・ドルを奨励するようだけど、旅行者もユーロは自由に使えてユーロ本位制みたいになるのだろうか? 仮にうまくいくにしても、時間がかかりそうだ。その前に資本主義経済のうまみを知った人たちが反旗を翻すかもしれない。そろそろカストロに引っ込んでもらってもいいだろう。でも次に出てくるのはラウル(弟)なのか?