16日のエントリー「2種類の怒りに戸惑い」を書いた時点では、3人の人質について世間は「大変な目に遭ったけど自己責任だからしょうがないよね」という話で落ち着いて、自衛隊をイラクから撤退させるべきかどうかの議論に移っていくのだと思っていた。それが私の考える「自己責任」だったわけ。ところがいまじゃ自己責任ていう言葉が一人歩きしちゃって、今年の流行語大賞になりそうな勢いだ。自己責任の大合唱の陰でニヤリとしているのは誰なんだろう?
さて、イラク人質事件について再び書く気になったのは、イラクからメールが来たから。内容を一部紹介することについては「名前、居住地、英語の原文メールを一切公開しない」という条件で快諾いただいた。この人の宗教的背景や職業は知らない。パソコンが使えて英語のメールが書ける恵まれた立場の人ということは確か。文中では挨拶やイスラム教特有の表現なのか理解できない部分は省いた。カッコ内は筆者(らくだ)の説明。
今回の(3人の)人質事件にはたいへんな憤りを覚えました。ただ、イスラム教徒やイラク人がすべて野蛮だとは思わないでください。武器を持たない人、特に女性に銃を向けて人質にするというのはイスラムの常識では考えられないことです。犯行グループは決して一般的なイラク人ではありません。ならず者たちです。厳しく処罰されるべきです。
3人がイラクを助けるためにやってきたことは、報道で知りました。私たちは客人をもてなす文化があります。今回このような事件が起きたのは卑劣な犯罪者のせいですが、治安を守れなかったGC(イラク統治評議会)の責任も問われるはずです。3人にが責められる理由はありません。GCが機能していないならCPA(連合軍暫定当局)に問題があるのです。
それでは私はアメリカの占領統治に反感を持っているかというと、そうでもありません。私はサダム政権下で仕事を奪われました。今は最悪の時期だけど、将来はきっとよくなるはずと期待しているのです。日本では「アメリカ人は死ね」と騒ぐイラク人の姿が毎日のように報道されているかもしれません。しかし、私の知る限りそういう人はごく限られています。私のように静かに平和を祈っているイラク人もたくさんいることは知っておいてください。
アルジャジーラはご存知のことと思います。今回の人質事件をきっかけに日本でも広く知られたのかもしれません。私は(複数の)人質事件でアルジャジーラが犯行グループのプロパガンダを垂れ流した報道姿勢に激しい怒りを覚えました。
さて、日本の自衛隊についてですが、私の生活には直接関係ありません。それに正直いってどんな活動をしているのか知らないのです。あなたは自衛隊を撤退させるべきだとお考えのようですが、私個人としてはイラクにとどまってほしいです。どうぞイラクを見捨てないで下さい。一連の人質事件のせいでイラクの復興再建が遅れてしまうのではないかと心配でなりません。
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2種類の怒りに戸惑い(4月16日)